
当社は2019年10月の創業以来、つねにフュージョンエネルギーの実現といち早い産業化を見据え、事業を推進してきました。
6周年を迎えた今年は、フュージョンエネルギーの実現という目標に向けて、これまで以上の飛躍を実現できた一年だったと確信しています。
この過程において、私たちのビジョン・ミッションに共感し、多大なるサポートをいただいた顧客、投資家、サプライヤー、パートナーの皆様に、心より感謝申し上げます。
新たなる一年を迎えるにあたり、改めて今年の当社の歩みを振り返りたいと思います。
中核事業の成長:ジャイロトロンシステム、2つのUNITYプロジェクト
ジャイロトロン事業では、米国エネルギー省科学局が管轄するDIII-D国立核融合施設、英国Tokamak Energy社など複数のパートナーからの受注分を現地に納入し、本格稼働に向けたサポートを継続しています。その一方で、新たな顧客のニーズに応えるべく、これまでにない高周波数に対応するための技術開発、また高効率で低コストなシステム提供に向けて、開発を加速させています。
日本の京都リサーチセンターに建設されている発電技術の実証を行う統合試験プラント「UNITY-1」は、来年初めの本格運転に向けた準備が進んでおり、10月には開発状況を紹介する動画コンテンツも公開し、大きな反響をいただいています。 また、UNITY-2の燃料サイクルシステムでも活用される液体金属からの水素回収試験も実施するなど、すでに世界のフュージョン業界に共通する技術課題解決に向けた実証が始まっています。
統合型フュージョン燃料サイクル試験施設である「UNITY-2」はカナダ原子力研究所(CNL)とのジョイントベンチャーFusion Fuel Cycles Inc.(FFC)のもとで開発が進み、いよいよ11月にカナダ現地での建設を開始しました。2026年の運転開始に向け、オンタリオ州政府との連携や General Atomics、株式会社国際協力銀行(JBIC)、株式会社三菱UFJ銀行からの支援を通じ、プロジェクトが確実に進捗しています。
これらUNITYプログラムは、世界中のフュージョンプラント建設・実装に向けた技術課題の解決に行う重要な実証プロジェクトとなっています。
FAST プロジェクト:2030年代の発電実証実現に向けた決意
今年4月、日本国内でのフュージョンエネルギー発電実証を目指す産学連携プロジェクトFAST(Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)をリードする新会社「Starlight Engine株式会社」を設立し、11月には概念設計を終え、国内の民間主導プロジェクトとして初となる「概念設計報告書(CDR)」を公開しました。
昨年11月のプロジェクト始動からわずか1年で概念設計を終了したことは、内閣府「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」で明記されている「世界に先駆けた2030年代の発電実証」という国家目標に応える、私たちの強い決意を示すものです。
さらに、その実現に向けて100名を超える国内外の科学者・エンジニアを結集できたことは、本プロジェクトの大きな成果です。
FASTは今後、建設に向けたより詳細な設計プロセスとなる工学設計活動へと移行します。引き続き、民間ならではの圧倒的なスピードで、工学設計の最終レポートとなる工学設計報告書(Engineering Design Report :EDR)を2028年までに完了するべくチーム一丸となって取り組んで参ります。
この挑戦をやり切ることこそが、フュージョンエネルギーを真に現実のエネルギーへと押し上げると、私たちは確信しています。
世界のフュージョンコミュニティで高まる存在感
英国では、3月にロンドンの在英日本国大使館と、一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)で共同開催された「UK Fusion Symposium」にて当社が中心的な役割を果たしました。また、6月には英国原子力公社(UKAEA)の本拠地であり、英国の核融合研究の中核を担う「カラム・キャンパス(Culham Campus)」への当社の英国子会社のオフィス移転を完了しました。現地の主要機関・企業との連携を一層強化しながら、STEPをはじめとする同国のフュージョン旗艦プログラムに貢献を続けています。また、今年日本での開催となった国内外のフュージョン関係者が集うイギリス発のイベント「FusionXInvest: APAC」ではホストを務め、国際的なネットワークのさらなる拡大に寄与しました。
米国では、米国エネルギー省(DOE)、国立研究機関との協働が深化しました。特に、DOEが10月に新たに発表した Fusion Science and Technology Roadmapでは UNITY-1およびUNITY-2と連携していくことが明記され、当社のフュージョンブランケット・熱サイクルシステム、フュージョン燃料サイクルシステムを通じた技術貢献が改めて認められました。
日本国内では、政府関係者・関係省庁との対話を重ね、国家戦略としてのフュージョンエネルギー推進を牽引しています。 フュージョンというキーワードのもと、大阪・関西万博でも複数の参加機会に恵まれ、国内におけるフュージョンの存在感の高まりを象徴する出来事となりました。
160人超えの組織へと成長:当社の強み
当社は世界で160名以上の多様で情熱ある仲間が集う組織へと成長しました。
今年初めには東京本社を大田区に移転し、オフィスとR&D機能を統合した新拠点を整備しました。また、シリーズCエクステンションおよびデットファイナンスにより、総額93.8億円の資金調達を完了し、次の成長ステップへの基盤を整えることができました。
社内では、10月に全社のTownhall Meetingを開催。創業から6年間の歩みを振り返り、将来に向けた計画を社内で共有しました。 フュージョンはもはや研究者だけの夢ではなく、エンジニアやビジネスプロフェッショナルが協働することで現実のものとなりつつある。そのことを改めて実感する機会でした。
こうした一年の総括として、当社は 「Kyoto Fusioneering Year End Review 2025」(英文のみ) を発表しました。ジャイロトロン、UNITY-1/2、FAST の技術・事業の進捗を包括的にまとめた内容となっています。ぜひご覧ください。
フュージョンが将来のエネルギー源としてのみならず、経済安全保障と産業競争力の要と位置付けられるなか、2026年以降も、京都フュージョニアリングはグローバルパートナーとの協働をさらに深め、「研究から実現へ」の移行を加速し、フュージョン産業ならびに持続可能な社会の構築に貢献してまいります。
私たちを信じ、支えてくださるすべての皆様に、心より感謝申し上げます。
これからも、新たなエネルギー時代の礎を、共に築いていきましょう。
京都フュージョニアリング株式会社
代表取締役会長CEO 小西 哲之
代表取締役社長COO 世古 圭