皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。
今回のブログでは嬉しいお知らせをお届けします。
なんとこのたび、当社技術者であるLee Suneui(イ・ソニ)の学生時代に執筆した論文が、「第20回核融合工学部会賞」に選ばれました!!
ソニがどんな研究を行っていたのか、そして彼女が当社で日々取り組んでいる業務や今後のチャレンジについて聞いてきましたのでご紹介します。
– どのような研究内容の論文だったのですか?
私が発表した論文のテーマは「JET-ITER-like wall 真空容器内におけるトリチウムの分布と蓄積メカニズムの解明」というものです。
簡単に説明すると、フュージョンエネルギーの燃料の1つ「トリチウム」が、核融合反応を閉じ込める「真空容器」の内側(プラズマ対向壁)のどの部分にどのくらい蓄積されているのかを分析しました。
この研究は国際プロジェクト「ITER」を想定した環境で行うべく、イギリスにある欧州トーラス共同研究施設「JET」の機器を使用することになりました。当時私が在籍していた富山大学が、トリチウムを扱うことができる数少ない研究施設のうちの一つだったこともあり、このような世界規模の研究に携わることができました。非常に貴重な機会で、とてもいい経験になりました。
– その研究を通じてどのようなことがわかったのですか?
研究の結果、プラズマ対向壁の材質を変えると、核融合炉内に溜まるトリチウム量を抑えられることを発見しました。
これまで、このプラズマ対向壁には高温でも溶けにくい「炭素」が使われていましたが、トリチウムと反応し、不純物として溜まりやすいという欠点がありました。不純物があると核融合反応の効率が下がったり、核融合炉内を傷つける要因になったりしてしまうのです。
また不純物が蓄積すると、核融合炉の安定的な運転にも悪影響を及ぼします。トリチウムは放射性物質なので核融合炉内で使用できる基準量が定められています。トリチウムを含む不純物が炉内に溜まっていると、新たにトリチウムを燃料として核融合炉へ投入できなくなってしまうのです。
この不純物の蓄積を抑えるため、ITERのプラズマ対向壁ではトリチウムとくっつきにくい特性のある「タングステン」と「ベリリウム」という金属が採用されることになりました。
これら2つの金属がトリチウムの蓄積を防ぐ効果は既に判明していましたが、それを実際のプラズマ対向壁に採用することで、結果としてどれぐらいのトリチウム量が蓄積されるかの分析・実証はまだ行われていませんでした。
今回私の研究を通じて、実際のJETのプラズマ対向壁を使ってトリチウムの蓄積量を分析した結果、タングステンとベリリウムを採用することで確かに核融合炉内のトリチウム量を抑えられることを実証できたのです。
その功績が認められ、今回ありがたいことに「第20回核融合工学部会賞」を受賞することができました。
(より詳しく研究内容を知りたい方はぜひ論文をご覧ください。)
– 京都フュージョニアリングでは、どういうことに取り組んでいますか?
私はPlant Technology(核融合炉周辺機器)部門でFuel Cycle System(燃料サイクルシステム)の研究開発を行うチームの一員として働いています。その中で私はトリチウムを貯蔵する仕組み(ストレージ)のデザインを担当しています。
ストレージはトリチウムを適切な状態で保つ冷蔵庫とも言えるようなものです。冷蔵庫には食材の鮮度を高いまま維持する機能を備えたものや、大容量・省エネと様々なものがあるように、ストレージにも色々な種類があります。
どうすればトリチウムを効率よくかつ安全に蓄えられるストレージをつくれるか、日々論文を読み漁り、実験を重ね、チームメンバーと話し合いながらプロジェクトを進めています。
– 今後はどういうことにチャレンジしていきたいですか?
ストレージのデザインが決まった後は、燃料サイクルシステム全体の設計にも携わっていきたいです。
核融合炉内に安定かつ安全な燃料供給を行う燃料サイクルシステムは、フュージョンエネルギーの実現に欠かすことができません。この大事な部分の研究開発において、周りの経験豊富なメンバーから知識や技術を学び、いつか自らの手でアイデアを形にできるといいなと思っています。
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より一層技術者として躍進していきたいと語るソニが印象的でした。また、ブログや社員インタビュー「Behind the Fusion Scene」で彼女の挑戦する姿や当社での活躍をご紹介したいと思います。
今後とも京都フュージョニアリングにご注目ください。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう!
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