皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。
フュージョンエネルギーの源である核融合反応は太陽で起きている現象と同じですが、地球上で起こすためには燃料をプラズマ状態(固体、液体、気体と並ぶ第4の状態)にして衝突させるとともに、地上ではそのプラズマを容器の中で閉じ込める必要があります。これを実現するために考えられたのが様々な「閉じ込め方式」です。
「閉じ込め方式」は多種多様で、日本も参加している世界7極による国際プロジェクト「ITER」では磁場閉じ込め方式のトカマク型が採用されています。他にも同じく磁場閉じ込め方式でステラレーター/ヘリカル型や逆磁場配位型、ミラー型というものがあります。慣性閉じ込め方式では、ニュースなどでもよく見かけるレーザー核融合方式があります。
今回のブログは久しぶりの「ゴリ文シリーズ」!
フュージョンエネルギーならではのユニークな閉じ込め方式について、ご紹介します。
1. トカマク (Tokamak)
トカマクはドーナツ型の真空容器を使用し、強力な外部磁場とプラズマ自身の電流でプラズマを閉じ込めます。過去の歴史から最も研究が進んでおり、冒頭に触れたように国際協力プロジェクトであるITERがこの方式を採用しているほか、日欧が手掛けるJT60-SAやアメリカのDIII-D、イギリスのJETや韓国のKSTARなどでも採用され、主要な閉じ込め方式の一つとして知られています。実現可能性が高いとされ、世界中で大規模な実験装置が複数稼働しています。
ちなみに、1950年代にソビエト連邦(現ロシア)のクルチャトフ研究所で開発された「T-1」が世界で初めて運転されたトカマク装置です。
茨城県那珂市にある世界最大級のトカマク型実験装置「JT-60SA」
出典:核融合エネルギーの実現に向けて:文部科学省 (mext.go.jp)
2. ステラレーター (Stellarator)
トカマクと同じくドーナツ型の真空容器を使用しますが、外部磁場コイルのみでプラズマを閉じ込めます。ヘリオトロン、ヘリカルもこのステラレーター型の一種です。持続的な運転ができる可能性があるとされています。1950年代にアメリカのプリンストン大学プラズマ物理研究所で運転されたのが最初の装置で、現在は日本のHeliotron J(京都大学)やLHD(核融合科学研究所)、ドイツのWendelstein 7-Xなどの装置が知られています。
日本のスタートアップ企業であるHelical Fusionもこの形式の技術開発に取り組んでいます。
岐阜県土岐市にある大型ヘリカル装置「LHD」
出典:核融合エネルギーの実現に向けて:文部科学省 (mext.go.jp)
3. 慣性閉じ込め方式 (Inertial Confinement Fusion, ICF)
高エネルギーのレーザーを小さな燃料ペレットに照射して加熱し、そのペレット内部で急激な高密度状況をもたらすことで核融合反応を起こします。核融合反応は脈拍のようなパルス的に生じるので、社会からのニーズに合わせたエネルギー供給が可能というメリットがあります。
最初のICF実験は、1960年代後半にアメリカのLawrence Livermore National Laboratoryで開始されました。日本では阪大発スタートアップのEX-Fusionが、アメリカではBlue Laser Fusionが技術開発に取り組んでいます。
大阪府吹田市にある大型レーザー実験装置「GEKKO XII」
出典:核融合エネルギーの実現に向けて:文部科学省 (mext.go.jp)
4. タンデムミラー (Tandem Mirror)
円筒状の真空容器の両端に強い電位構造と磁場を配置し、その間をミラー構造で反射、往復させることでプラズマを閉じ込める方式です。磁場コイルの配置がシンプルで、小型化できる可能性があることが特徴とされ、1970年代後半から1980年代前半にかけて米、日、露でそれぞれ精力的に装置の開発が行われました。
現在は、アメリカのRealta Fusionが実現に向けて取り組むほか、世界最大級のタンデムミラー型プラズマ閉じ込め装置GAMMA 10/PDXを筑波大学が保有しています。
5. 逆転磁場配位 (Field-Reversed Configuration, FRC)
磁場閉じ込め方式のうち、ポロイダル磁場でプラズマを閉じ込めるというシンプルな磁場構造を持つ方式です。プラズマを閉じ込めるための圧力を高くできる可能性があります。現在はアメリカのTAE TechnologiesやHelionが開発に取り組み、日本では日本大学等にFRC装置があります。また、日本のスタートアップ企業のLINEAイノベーションはタンデムミラーの経験と利点を活用したFRC方式の開発に取り組んでいます。
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今回はゴリ文シリーズということで、あまり詳しい技術の紹介は割愛しましたが、いかがでしたでしょうか。ご紹介できたのは5種類だけですが、他にも様々な方式が研究されており、まだまだ新たな方式が出てくるかもしれません。これを機に興味を持った閉じ込め方式がありましたら、ぜひより詳しく調べてみてください。本文に貼っているリンクからそれぞれのウェブサイトに飛ぶと、充実した説明をご覧いただけます。
それでは次回のゴリ文シリーズをご期待ください!
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