
皆様こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。
当社は、フュージョンエネルギーの早期実現に向けて英国原子力公社(UKAEA)とトリチウム増殖性能を備えたブランケット設計に関する技術開発において包括協定を締結しています。(詳しくはこちらのリリースをご覧ください。)
その一環で、両者の連携を深めるため、UKAEAからDan Lee-Lane氏とParth Kotwal氏が、2024年11月から6か月の間、当社に出向しています。
Dan氏とParth氏のお二人にインタビューし、これまで当社で経験したことや日本での生活について聞いてきましたのでご紹介します!
UKAEAでの担当業務について教えてください。
Dan氏:
2020年2月からUKAEAで従事し、核融合炉開発プログラム(STEP:Spherical Tokamak for Energy Production)で、フュージョン燃料サイクルを専門とするエンジニアを務めています。
私は主にトリチウム増殖性能を備えた先進のブランケットから実際にトリチウムを回収するための「トリチウム抽出システム」の設計を担当しています。
Parth氏:
私は2022年9月からUKAEAで働いています。大学で学んだ航空宇宙工学の知識を活かし、技術部門の技術開発グループで、主に熱や構造解析、熱伝導などの機械工学に関する業務に携わっています。
STEPプログラムにも関与し、HIVE(誘導加熱による極限検証)施設のプロジェクトにも携わってきました。
お二人が当社に出向することになった理由を教えてください。
Dan氏:
私がフュージョンエネルギー関係の国際学会に参加したとき、何度かKFのエンジニアの方々と交流する機会がありました。技術的な話をするたびに彼らの専門性の高さに毎回驚かされていましたが、特にノースカロライナ州で行われたワークショップでKFが技術開発に取り組んでいる液体金属システムの説明をCEOである小西さんから聞いたときは、「この会社は本当にすごいことをしているんだ」と衝撃を受けました。
その後、KFに出向する機会があると知り、エンジニアとして大きく成長できるチャンスだと思い、すぐに立候補しました。面接を経てKFに出向できると決まったときは、本当に嬉しかったです。
Parth氏:
自分のキャリアアップを考えたときに、イギリスと文化が異なる日本で働けることのが、非常に魅力的でした。さらに、KFが保有する先進的な技術に触れ、優秀なチームと一緒に仕事ができる機会は、かけがえのないものになるだろうと思いました。「エンジニアとしての専門性を高めたい」という私の目標とも合致していたので、すぐに立候補しました。
Dan氏:
実は、私たちはこれまでUKAEAでは一緒に仕事をしたことはありませんでした。ParthもKFに出向すると聞いてすぐに「日本に行く前にコーヒーでも飲みながら話しませんか?」とメッセージを送り、やり取りしていました。
まだ出向期間の途中ですが、当社で経験したことで、特に印象に残っていることを教えてください。
Dan氏:
KFの実践的なアプローチは非常に面白く、特に、フュージョンエネルギーを発電につなげる「フュージョン熱サイクルシステム」の発電試験プラント「UNITY-1」の間近で働けているのが印象的です。
実際に液体金属を使って500℃の高温を扱う様子を目の当たりにし、磁気流体力学といった理論だけではわかりにくい分野も実践的に学べています。
UKAEAで培ってきた理論にKFで得られる経験が組み合わさることで、知識がより体系的に身についている実感があります。
Parth氏:
私の場合、UKAEAでは使ったことのない計算ツールやコンピューター支援設計(CAD)を使う機会に恵まれています。
また、「UNITY-1」の運用手順を観察し、理論上の設計をどのように動かしていくのかを目視することで、理論を実践に落とし込むことができています。
KFで得られる経験を活かして、新しいツールの使い方や実践的なアプローチを身に着けることで、スキルアップできていると感じます!

当社で得られた経験を今後どのように活かしていきたいですか?
Dan氏:
フュージョンエネルギーの研究開発では、どうしても理論や予測に偏ってしまう部分がある分、KFの実験を重視した取り組みに価値があると感じています。
特に「UNITY-1」のような実証試験を行う施設は、他のフュージョンエネルギー関係の企業や研究機関もその技術を応用できるので、フュージョンエネルギー業界全体の進歩に大きく貢献していると思います。
例えば、「UNITY-1」のような試験施設を作る際に重要な要素として、磁石の配置に関する理解が深まりましたね。
一方で、UKAEAは統合システム設計のノウハウに長けているので、例えばテストブランケットモジュール(TBM)などの技術において、KFに貢献できる点もあると思います。
Parth氏:
「UNITY-1」の運用プロセスや試験設備の立ち上げを通じて、効率的な実験方法を学ぶことができています。「UNITY-1」全体の完成はこれからですが、すでに完成しているサブシステムを活用し実験できるのは非常に効率的です。
このような研究開発の進め方は、今後UKAEAのプロジェクトでも実践できそうです。Danが言ったように、理論を実際の運用に落とし込む経験が一番の収穫ですね。
Dan氏:
あと、日本で働くことで得られる文化的な経験もすごく貴重だと感じています。イギリスとは大きく異なる環境なので、日々新しい発見があります。
日本に来てから数か月が経ちました。京都での生活はいかがですか?
Dan氏:
京都での生活は本当に素晴らしい経験です。京都は伝統的な文化と現代的な要素を兼ね備えており、とても面白い地域ですね。特に寺院巡りや、近くの山にハイキングに行って、夕焼けに染まる京都の街を眺めるのが好きです。
他にも、食文化にも満足しています!日本に来てから出会った食べ物では焼きそばが一番好きで、色々なお店を巡っています。
今度は京都を飛び出し、北海道などのほかの地域にも行ってみたいみたいですね。
Parth氏:
私は京都駅にある「ラーメンストリート」の探索を楽しんでいます。ここで色々な種類のラーメンを食べたことで、地域によってラーメンの味が全然違うことにも気が付きました。例えば、北の寒い地域のラーメンはコクがあって脂っこいスープが特徴で、温暖な地域のラーメンとはまた違った味だと感じます。こういった違いを味わいながら、イギリスとは異なる文化に触れるのはすごく刺激的で日々充実しています。
Dan氏:
出向中は、KFの皆さんが親切にしてくれたおかげで、新しい環境にすぐ馴染むことができました。本当に感謝しています。

このようなプログラムを今後も続けるべきだと思いますか?
Dan氏:
続けるべきだと思います。フュージョンエネルギーの実現には世界中の多様な専門知識とコラボレーションが不可欠です。今回の出向のように、知識を共有し、共にイノベーションを進められるプログラムは本当に画期的だと思います。
もちろん、知的財産や輸出規制の観点では留意することもありますので、そこはしっかりと対応しなければなりませんが、それ以上のメリットがあるのではないでしょうか。
Parth:
フュージョンエネルギーの分野では、その分野に適した材料や製造技術の研究が行われているので、学ぶべきことが本当にたくさんあります。国際会議などに参加し、発表を聞くのも有意義ですが、実際に現地で様々なエンジニアと一緒に働くからこそ得られることもあります。
他のエンジニア・研究者がこれまでのキャリアで培ってきた技術や知識を共有することで、お互いに新しい視点や考え方を身に着けることも可能です。国を超えたコラボレーションを通じて、技術的な知識だけでなく、新しい視点を得られることがフュージョンエネルギーの進展に大きく貢献すると思います。
Dan氏:
KFとUKAEAのように、フュージョンエネルギーに取り組む組織の間で、今回のようなプログラムがさらに増えることを期待します。
お二人とも、ありがとうございました!残りの期間も引き続き、よろしくお願いします。
このようなコラボレーションの機会は、出向されているお二人だけでなく、当社のエンジニアにとっても貴重な経験となっています。フュージョンエネルギーの早期実現には、パートナーとの協力関係が不可欠ですので、引き続き良好な関係を築いていけるよう取り組んでまいります。
今後とも京都フュージョニアリングにご注目ください。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう!
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