2025.05.26
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MORESCOと京都フュージョニアリングがフュージョンプラント向けの耐放射線性潤滑剤に関する業務提携を開始

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株式会社MORESCO(以下、MORESCO)と京都フュージョニアリング株式会社(以下、京都フュージョニアリング)は、将来のフュージョン(核融合)プラントに用いられる耐放射線性潤滑剤の開発および販売に関する業務提携を開始したことをお知らせします。

■業務提携の背景と概要
フュージョンプラントを構成する真空ポンプやタービンなどの回転機器においては、安定した稼働とメンテナンスサイクルの延長を実現するために、潤滑剤の使用が欠かせません。さらに、炉内機器の交換では遠隔操作が必須で、ロボットなど様々な機器の使用が不可欠です。これらでは、潤滑剤を使用することで、機器の摩耗や負荷を低減し、高い性能を維持しながら長期間にわたり使用することが可能になります。

しかしフュージョンプラントでは、燃料の一つであるトリチウムや核融合反応によって発生する中性子、さらに生成する放射性物質からの様々な放射線により、機器とともに潤滑剤も過酷な被ばく環境にさらされます。一般的な潤滑剤は、放射線照射により物性が変化してしまい、粘度の上昇や固化などにより本来の性能を発揮できなくなるだけでなく、機器の不具合や故障の原因にもなりかねず、定期的なメンテナンスが不可欠となります。そのため、メンテナンス性やコストを考慮して潤滑剤を使用せずに、磁気の力で摩擦による抵抗を低減する「磁気軸受」と呼ばれるオイルフリーの手法も取り入れられています。しかし、強い磁場環境にあるフュージョンプラントでは磁気軸受を採用することが難しく、また商業展開する上でのメンテナンスサイクルの延長やコストの削減を考慮すると、高水準の耐放射線性を有する潤滑剤の開発・導入が求められます。

MORESCOは、耐放射線性潤滑剤の製造を行っており、核融合炉や粒子加速器の遠隔操作システムの可動部などにも用いられる高性能な製品を提供しています。同社の製品は放射線が照射されても潤滑剤の粘度の変化は緩やかで、照射前と比較しても遜色なく使用することができます(※)。フュージョンプラントで用いる潤滑剤は、真空環境で使用することも多く、蒸気圧が低く真空を汚染しないことも重要な要素です。

このたびの共同研究開発では、これらの製品を京都フュージョニアリングが開発している機器で直接的評価を行うことで、フュージョンプラント用途としても使用できる高性能な耐放射線性潤滑剤の開発に取り組みます。

また、耐放射線性潤滑剤の評価・開発後には、京都フュージョニアリングが販売する機器の耐放射線性潤滑剤として、MORESCOの製品を販売します。京都フュージョニアリングが持つ国内外の企業や研究機関とのネットワークを活かし、MORESCOの高性能な潤滑剤を世界のフュージョンプラント用途に向けて広く販売していきます。

※:「Characterization of a polyphenyl ether oil irradiated at high doses in a TRIGA Mark II nuclear reactor」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168583X21001130
「Selection of radiation tolerant commercial greases for high-radiation areas at CERN: Methodology and applications」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S235217912100154X

■両者からのコメント

株式会社MORESCO 代表取締役社長CEO 両角 元寿
当社の耐放射線性潤滑剤は、欧州の世界最大規模の加速器内機器や現行の核分裂型原発設備や福島原発の廃炉ロボット可動部等での採用を通じ、実績を積んで参りました。この度、将来の主電源方法として期待されるフュージョンエネルギー発電の主要周辺機器での使用に対し、専用装置の開発・市場展開において世界有数の技術力を有する京都フュージョニアリング社と共同で開発・評価・販売ができる機会を得られますことを、誠に嬉しく思います。MORESCOは今後も世界に比類ない性能を有する耐放射線性潤滑剤を通じて、持続可能なエネルギー社会の実現へ貢献して参ります。

京都フュージョニアリング株式会社 Co-Founder and CEO 小西 哲之
日本国内はもとより、世界でも数少ない高性能な耐放射線性潤滑剤を開発する優れた技術力を持つMORESCO社とともに、フュージョンプラント用途の製品開発およびその販売に取り組めることを嬉しく思っています。高温や高磁場、そして放射線照射と過酷な環境下となるフュージョンプラントにおいて、安定的に機器を稼働させるとともに、メンテナンスを最小限にできることは理想であり、そのために欠かせない潤滑剤の開発は、フュージョンエネルギーの実用化にも大きく貢献するものと捉えています。

■株式会社MORESCOについて
MORESCOは、自動車部品製造時などに使用される特殊潤滑油や、紙おむつなどの組み立て用のホットメルト接着剤などを開発・製造・販売する神戸の化学品メーカーです。1958年に松村石油株式会社から分離独立し誕生しました。
MORESCOの強みは、物と物が触れ合う「境界領域」での潤滑、接着、表面保護などの機能を果たす製品です。創業以来培ってきた、ブレンド・合成・精製技術を駆使し、「境界領域のスペシャリスト」として、市場を牽引するオンリーワン製品や高付加価値製品を多数生み出しています。
「地球にやさしいオンリーワンを世界に届ける」企業を目指し、「境界領域」への挑戦をこれからも続けていきます。
ウェブサイト:https://www.moresco.co.jp

■京都フュージョニアリング株式会社について
京都フュージョニアリングは、京都大学をはじめ、日本で長年培われてきた核融合研究の成果に基づき2019年に設立された、フュージョンエネルギープラントのエンジニアリング企業です。
プラズマ加熱装置、熱取り出しブランケット、高性能熱交換器、水素同位体移送ポンプを始めとした先端核融合工学分野において世界有数の技術力を有しており、英国原子力公社を始め全世界の核融合研究開発機関・企業を顧客に持ちます。
日本のものづくり力を結集し、革新的なエンジニアリングソリューションを世界に提供することで、人類に究極のクリーンエネルギーを提供し、フュージョンエネルギーという新たな世界市場を創出することを目指しています。
ウェブサイト:https://kyotofusioneering.com

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