
皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。
今年1月に開設した新拠点は、研究開発エリアとオフィスエリアが併設しています。以前のブログではオフィスエリアを中心に紹介しましたが、今回は研究開発エリアに潜入し、どのような開発を行っているのかをレポートします。
久しぶりの“ゴリ文が学ぶ”企画。できるだけわかりやすく、ご紹介します。
ゴリ文シリーズの始まりはコチラのブログを参照ください。
– フュージョンエネルギープラントに欠かせない「フュージョン燃料サイクルシステム」
フュージョンエネルギーを実用化する上では、継続した運転が必要になります。そのためには絶えず核融合反応を起こさなければならず、核融合炉に燃料を供給し続ける必要があります。そこで重要な技術になるのが「フュージョン燃料サイクルシステム」です。
一般的に核融合反応を起こしやすいと言われる重水素とトリチウムによる核融合反応(D-T反応)をターゲットとした場合、核融合炉に投入した燃料ガスの多くは核融合反応を起こさずに核融合炉内にガスの状態で残ってしまいます。しかし燃料のトリチウムは非常に希少な元素のため、そのまま排気し処分してしまうとすぐに燃料不足に陥ってしまいます。そのため、フュージョン燃料サイクルシステムでは、核融合炉から排気したガスから重水素やトリチウムだけを回収し、再利用できるように循環させます。
フュージョン燃料サイクルシステムは、排気したガスを移送するための特殊なポンプ、水素だけ透過するような性質を持つもの、また化学反応を用いて燃料元素の回収を促進するものなど、複数の機器やシステムを統合して構成されます。
この拠点では、個々の機器やシステムの性能試験などを行っており、今後は統合試験を行う「UNITY-2」に組み込まれていくこととなります。
UNITY-2とは:トリチウムを使用した実環境での統合試験を行うため、カナダ原子力研究所とのジョイントベンチャー Fusion Fuel Cycles Inc.が主導し、カナダ・オンタリオ州のチョークリバーにて建設を進めています。
– 研究開発現場をレポート!
ここからは研究開発現場の一部を、写真を交えながらご紹介します。
なお、ここではトリチウムなどの放射性物質を使用した試験は行っていません。

まずはフュージョン燃料サイクルシステムに欠かせないポンプ。
真空の核融合炉内からガスを排出・移送させるために用います。三國重工業と開発した真空ポンプは放射性物質に対して高い耐久性を持ち、水素などの軽い元素でも高い排気性能を発揮します。このほかに、ターボ分子ポンプ、メタルベローズポンプを組み合わせ、性能の検証を行っています。

次に、燃料貯蔵用の装置。
排気ガスから分離・回収した重水素やトリチウムを貯蔵し、必要な時に燃料を適切に供給するために用いられます。水素吸蔵合金のZrCo(ジルコニウム-コバルト)に吸収して貯蔵、その後放出して再利用するのですが、水素を実際に蓄えるための最適な温度や圧力を検証しています。ここではトリチウムは扱わず、水素を用いて試験しています。

続いては、プロトン導電体ポンプ(Proton Conductor Pump)と呼ばれる装置。
核融合炉から排出されるガスの中から水素同位体を選択的に抽出することができるプロトン導電体の特性を利用したポンプです。ここでは水素および重水素を選択して移送する性能を試験しています。

次は核融合炉内から排出したガスから不純物を取り除き、水素同位体を効率的に回収するためのパラジウム拡散器(Palladium Diffuser)という装置です。
パラジウムが持つ水素同位体ガス選択透過性を利用し、排気ガスから水素同位体ガスのみを回収する性能試験を行っています。

最後は、Water detritiation system (WDS)と呼ばれる装置。
核融合炉から排出したガスを分離させていく過程においてトリチウムを含む水が生成されるため、トリチウムを再利用するとともに、水を外部環境に適切に排出するために水からトリチウムを分離します。現在は、水素を混合した水蒸気を用いて、分離の性能を検証しています。
写真でのご紹介はここまでですが、このほかにもフュージョン燃料サイクルシステムに必要となる、水素同位体を分離するための装置や、トリチウムの計測器などの開発も行っています。

これらを統合したUNITY-2は2026年に稼働を開始するため、プラント技術開発部門のエンジニアはそれに向けた性能試験などに日々取り組んでいます。
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今回のブログではフュージョン燃料サイクルシステムの研究開発現場の様子をお届けしました。この技術を確立すればフュージョンエネルギーの社会実装への大きな一歩となります。日々努力しているエンジニアの様子は、また別の機会でも紹介したいと思います。
今後とも京都フュージョニアリングにご注目ください。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう!
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