
皆様、こんにちは
京都フュージョニアリングの広報担当です。
先月投稿した、技術をやさしく解説する「ゴリ文シリーズ」のブログでは、当社が建設・試験を進める統合試験プラント「UNITY-1」で用いられる液体金属について深堀りしました。まだご覧になっていない方は、ぜひこちらからご覧ください。
記事の中で、核融合反応を模擬した環境下で、VST(Vacuum Sieve Tray)という装置を用いてリチウム鉛の液体金属に含まれるフュージョンエネルギーの燃料であるトリチウムを回収する「水素同位体回収技術」を開発していることを紹介しました。ゴリ文シリーズ第9弾となる今回のブログでは、このVSTについて解説していきます!
※UNITY-1ではトリチウムを使わずに水素を用いて試験しています。
VSTの仕組みについて
まずはこちらの動画をご覧ください。
こちらの映像は、400℃を超える温度に加熱された液体リチウム鉛がVST内部でシャワーのような液滴で降り注ぐ様子です。
VSTとは、核融合反応で発生する高エネルギー中性子が、ブランケットという核融合炉の壁のような装置に仕込まれたリチウム鉛に含まれるリチウムと反応して生成されるトリチウムを回収するための装置です。
VST(Vacuum Sieve Tray)という名前の通り、装置の中は真空状態(vacuum)になっており、ふるい(sieve)のようにリチウム鉛からトリチウムを回収する機能と、リチウム鉛を滴下するためのトレイ(tray)が備わっています。
映像でご覧いただけるように、VSTではトリチウムを含んだ液体金属を小さな液滴として滴下させます。気相(気体状態の物質)の圧力を下げることで、リチウム鉛の液滴からトリチウムをガスとして回収しています。
このように液中に溶けているガスを回収する仕組みは、炭酸飲料の中に溶け込んだ二酸化炭素が、ガスとして抜けるイメージと近いです。
とはいえ、1段で目標のトリチウムを回収することはできないため、トレイを複数持たせて、複数の回収操作を通じて目標量のトリチウムを回収します。
トリチウム回収に関する当社の取り組み
当社では、VSTによる「水素同位体回収技術」を確立すべく、日々開発・試験を進めています。
まずはVSTの設計を行うにあたり、水を使って、液滴の大きさや滴下の速度などを細かく分析・調整し、リチウム鉛からトリチウムを抽出する上での最適な仕様を調べました。

その後、試験結果を踏まえてVSTを製造し、UNITY-1に設置しました。現在は、リチウム鉛の温度を保つヒーターや水素の量を検知するセンサー、液体金属の流量を調べる計測器やリチウム鉛を循環させる配管など、他の装置と連動させながら、統合的にリチウム鉛の滴下試験を試運転として実施しています。

UNITY-1での試運転を繰り返しながらデータを収集した後は、実際にトリチウムを用いた試験へと移行します。
トリチウムを用いた試験はUNITY-1では行わず、当社とカナダ原子力研究所(CNL)が共同で設立したジョイントベンチャー「Fusion Fuel Cycles Inc.」がカナダで開発を進めている「UNITY-2」でVSTの試運転を行う予定です。
UNITY-2は、トリチウムや重水素といった、フュージョンエネルギーに必要な燃料を絶えず炉心に供給するための「フュージョン燃料サイクルシステム」を実証する統合試験プラントです。そのため、VSTで抽出したトリチウムを安全かつ効率的に炉心に投入できるようにするため、今度はUNITY-2の燃料貯蔵システムや、燃料を運ぶポンプなど、UNITY-1とは異なる装置と連動させて統合的に試運転を行います。

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フュージョンエネルギーの実用化に向けて、当社は燃料となるトリチウムを安定的に供給する仕組みを開発しています。今後もVSTをはじめ、当社が推進する技術開発の様子をブログなどで発信していきますので、ぜひご注目ください。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう! THE FUSION ERA:https://kyotofusioneering.com/news_category/blog
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