2023.04.26
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: 坂口 政嗣

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坂口 政嗣 Business Development Division Manager
2022年10月より京都フュージョニアリング参画。古河電気工業株式会社およびグループ会社にて無線、通信用光製品ビジネスに従事。マイクロ波エンジニアとして、放送用アンテナや、加速器、核融合用の導波管などの設計に携わる。2017年からは新規ビジネス開発や開発マネジメントでブラジルの関連会社に駐在。九州大学 先端エネルギー理工学専攻卒、博士(工学)。

これまでのキャリアで印象に残っているご経験はありますか?
前職は、無線や通信用光製品を扱う企業で、放送用アンテナや導波管の設計、新規ビジネスの開発やマネジメントなどを行っていました。

入社後数年は放送分野のアンテナ開発に携わり、その後は7年ほど加速器や核融合に取り組む研究機関向けの導波管開発に携わりました。九州大学の球状トカマク装置QUESTの導波管設計に携わり、開発の専門性をより高めたいと思っていた所に、ちょうど会社や大学の教授から勧めて頂いた事もあって、同大学の先端エネルギー理工学専攻に社会人学生として入学、博士課程を修了しました。

その時は、企業のエンジニアとして製品を開発する傍ら、学生としてコルゲート導波管(核融合プラズマで使用されるミリ波・マイクロ波​​帯の導波管)の研究を進めていたので時間的な制約もあり大変でしたが、プロジェクト、研究を両立し完遂できたことは大きな強みになったと感じています。

その後は、マイクロ波の産業応用をターゲットとした新規ビジネス開発に携わり、2017年から5年間ブラジルのグループ会社に駐在しました。この駐在で初めて本格的に組織のマネジメントに携わりましたが、それまでエンジニア中心のキャリアを歩んできた私にとって、それまで扱ったことのない技術のマネジメントと並行して、異なる文化の中で組織マネジメントをするのは本当に骨の折れる仕事でした。

特に駐在当初は英語があまり話せなかったことに加えて、それまでは日本でドクターを取得して、エンジニアとして関わる仕事の多くを自分で解決できたこともあり、新しいチームで、自分一人でやれることがほとんどないような状況は、すごく苦しかったです。

一方で、そうした環境に追い込まれたおかげで、新しい気づきもありました。いい意味で肩の力が抜けたというか、「いかにメンバーに気持ちよく働いてもらうかに心を砕かないと何も進まない」と考えるようなったんです。

それまでは、積み上げてきた経験を活かして「自分の力でなんとかしたい」というプライドが少なからずありましたが、自分ひとりでできることには限りがあることを自覚してから、チームメンバーがのびのびと働ける環境作りや他のチームとの協働に目を向けるようになりました。もし、日本で同じように組織マネジメントを経験していたら、私の場合はこうした考えには至らなかったと思います。

苦しい時期もありましたが、心から尊敬できる同僚や上司に出会えたこと、彼らが親身になって力になってくれたことが自分にはすごく大きかったと感じています。ブラジルの多様性を重んじる文化や、ワークライフを大事にしながら自然体で働けるような環境を味わえたことも含め、今の自分の働き方や考え方にもつながる学びの多い経験でした。

京都フュージョニアリング(KF)に入社したきっかけは?
ブラジルから帰国し、新規注力分野の開発を担う研究所に配属されたものの、新規事業のプロジェクトマネジメントを経て、ビジネスマインドを持って進められる仕事が自分に合っていると感じ始めていたので、エンジニアのみに絞って働き続けていくのは難しいなと思っていました。

加えて、ブラジルで働いていた時は、現場メンバーも含めてみんな常に外を向いているというか、「当然グローバルにもビジネスを展開していく」というようなエネルギーがあったので、帰国してからは日本の製造業全体に対して漠然と閉塞感のようなものも感じていました。

そうして、グローバルを視野に入れた新規事業の仕事を探し始め、大手企業の新規事業開発職などもみていましたが、企業の主力事業とは切り離された将来への種まき的なビジネスが多く、企業を牽引するような活躍を目指すのは難しい印象でした。

その中で、KFは主力事業としている領域で、私が求めていた新規事業開発と、開発エンジニアの両方の経験を活かせる職種を募集していたこともあり、非常に魅力的に映りました。同時に、核融合業界でユニークなポジションをとっており、勝ち筋のあるビジネスモデルを持った会社だと感じました。

何より、KFなら国内外のサプライヤーやパートナーを巻き込みながら、日本全体のものづくりのレベルアップに貢献できるのではないか、そして私が感じていた日本の製造業界の閉塞感を壊すことができるのではないかと思えたことが決め手になりました。

現在KFではどのようなプロジェクトに取り組んでいますか?
KFの主力事業の一つであるジャイロトロン(高出力マイクロ波発振装置)関連の案件を中心に、プロジェクトマネジメントや開発プロセスの検討などを担当しています。具体的には、開発プロジェクトのタスク管理やプロジェクトに関わる人や業務をマネジメントするための仕組みづくり、サプライチェーンマネジメント、契約書の締結などを行なっています。

仕事の仕方という点では、ブラジル駐在時の事業マネジメントの経験が活きている実感があります。また、KFで技術のマネジメントに携わる上で、設計開発とアカデミアの両面で核融合に関わっていたことは自分の強みになっていると感じています。

現段階のKFは、まだまだ研究開発の色が強い組織ですが、今後、製造を行う上では、いかに製品を高品質かつ安定的に届けられる体制を作れるかどうかも、重要な課題の一つになると感じています。技術開発チームやコーポレートチームとも協力して、開発プロセスの検討を進めていきたいと考えています。

今後5年間でKFはどのように変化すると思いますか?
今は会社としても、業界としても、追い風が吹いている時期だと思いますが、5年後に、KFがより実業を行う企業として認識されるようになった時、その真価が問われるのではないかと個人的には考えています。

例えば、製品を世の中に出すためには、製品自体の研究開発だけではなく、その後の設計、製造管理や、販売後の品質保証を視野に入れた製品情報の管理など、製品ライフサイクル管理の体制を構築することが必要になります。

私たちはそうした仕組み、体制についても0から形作っている段階なので、これまで他の企業が積み重ねてきた既存の仕組みをリスペクトしつつ、自分達に即したものを取捨選択しながらうまく取り入れ、ものづくりに携わる企業として当たり前とされるようなことについてもしっかりと提供できる体制を作っていくことが不可欠だと思います。

坂口さん自身はKFでどのようなことを達成したいですか?
核融合の産業化を通じて、日本の製造業の活性化に貢献したいです。KFが国内のメーカーも巻き込みながら積極的にグローバルな活動を行っていくことは、日本の製造業界を再び元気にすることにつながると信じています。なので、KFが責任を持って製品を世の中に送り出していくことができるような体制、仕組みづくりに加えて、サプライヤーやパートナーとの協業体制の構築にも尽力していきたいです。

また、私自身、この会社での変化を楽しみたいと考えています。メーカーに在籍していた時と比べても、商社や研究機関など、さまざまなバックグラウンドの方がいて、このような環境で働けるのはとても刺激的だと日々感じています。一方で、それぞれ異なる業界のスタンダードを持っているので、仕事の進め方の違いをすり合わせていくのはそれなりに大変だなと感じることもあります。

これから会社が大きくなるにつれて、メンバーそれぞれが会社に求めることも多様化し、働き方についても今以上にケアしていくことが必要になると思います。私自身も、メンバーの日々の働きやすさや過ごしやすさにも心を砕くことを忘れないようにしたいです。

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