2025.06.30
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: 鈴木 裕一

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In a nutshell:

2024年6月に京都フュージョニアリング(KF)に入社した鈴木さんは、フュージョンエネルギープラントを模擬した環境下で発電技術の実証を行う「UNITY-1」のプラントオペレーターとして従事。化学プラントや天然ガスプラントなどでの経験を生かし、試験に伴う環境整備や装置の制御などを行っています。


現在鈴木さんは京都フュージョニアリング(KF)ではプラントオペレーターを担当しています。元々エンジニアリング業界に興味があったのですか?

私がエンジニアリング業界に踏み出したのは20代半ばのときでした。実はそれまで美容業界のディーラーとして、ヘアカラー剤やパーマ剤などを美容室などに販売していました。その仕事もやりがいはありましたが、将来のキャリアを考えるなかで、電気関係の仕事をしている父の影響もあり、技術職を志すようになりました。
その後、技術職を募集しているいくつかの会社に応募したところ、「クリーンで取扱いの容易な新燃料」とされるジメチルエーテル(DME)を用いたプラントのプラントオペレーターとして採用されました。これがエンジニアリング業界に入ったきっかけです。

新たなキャリアをスタートした後は、どのような経験を積んできましたか?

入社してちょうど3か月後に、DME実証プラントの運転が控えており、私はプラントオペレーターとして採用されたので、現場業務を担うことが求められていました。そのため、3か月間でプラントオペレーターとしての基礎はもちろん、プラントの仕様もキャッチアップしなければならず、とても大変だったことを覚えています。

未経験なだけでなく、機械や化学に関する知識がほとんどない状態で入社したので、最初は周囲の会話についていくのも、設計図を読むのも一苦労で、上司からはよく指導を受けていましたね。ただ、もともと興味があった分野だったのと、当時DMEプラントは世界的にもまだ目新しく、「世の中にはこういう先端技術を考え、それをカタチにしようと挑戦する人たちがいてすごいなぁ」との想いから、仕事にやりがいと面白さを見出せていたので、大変な日々を乗り越えることができました。

がむしゃらに情報のキャッチアップをして、少しずつ知識が身につき業務にも慣れてきたころから、少しずつ資格を取得し、さらに知識を深めていきました。
その後、商用化されていたLNG(液化天然ガス)プラントの制御系機器のオペレーションを担当することになり、地域ごとのガスの需要に応じて生産量を調整したり、安全運転をする上で欠かせない高圧ガスのメンテナンスの計画や、工事内容を記載した仕様書の作成、点検前の設備養生などを実施したりしていました。

現場の運転管理などが主体だったDMEプラントとは異なり、LNGプラントでは現場業務に加え、プラントのDSC(分散制御システム)の制御オペレーションも担当することになり、新たに学ばなければならないことが多くありました。ただ、少しずつ自分にできる業務の幅が広がっていることを実感でき、嬉しかったです。

その後、革新的なバイオ燃料の開発に取り組む会社に転職し、バイオ JET/ディーゼル燃料のプラントにも携わるなど、プラントオペレーターとしての経験を磨いてきました。

プラントオペレーターとして経験を積むうえで、大変だったことややりがいを感じたことはありますか?

大変だったのは、常にプレッシャーの中で業務に取り組まなければならなかったことです。通常時では、日々の運転データや生産量に関する試験結果を踏まえてプラントを運転していますが、予測不能なことが起きないか、常に緊張感はありました。さらにプラントに異変やトラブルが見つかったときは、緊急停止を避けるべく、より慎重な運転が求められます。
特に、商用化されているLNGプラントのオペレーションでは、プラントを停止させると利用者の生活に支障をきたしかねないので、失敗できないプレッシャーがありました。

また、自然災害や停電でプラントがシャットダウンしたときは、イレギュラーな環境下で複雑な設備を安全に停止したり、再起動したりする必要があり、大変なオペレーションも正直多々ありました。

これまでのキャリアの中で、プラント完成後、運転時にトラブルが重なり、「本当に実現できるのだろうか」とチームの士気が下がってしまうこともありました。しかし、メンバー全員で色々な意見を出し、運転方法など改善することで結果的に1年半から2年近くかけてバイオ JET/ディーゼル燃料を完成させることができました。

大変なことは何度もありましたが、DMEやバイオ燃料など比較的新しいエネルギープラントの技術を確立していく工程に携われたことは貴重な経験でしたし、やりがいを感じていましたね。
その中でも、試行錯誤を繰り返しながら、やっとの思いでマイルストーンを成し遂げたときの達成感は言葉では言い表せないものがあります。

これまで複数のエネルギープラントに携わってきた鈴木さんが、KFに転職したきっかけを教えてください。

私自身、新しいことに挑戦をして、目標を達成することに強くやりがいを感じていたのと、次世代エネルギーの技術開発にもっと携わりたいと思ったのがきっかけでした。転職活動をするなかで、偶然KFを見つけ、フュージョンエネルギーの実現に向けて取り組んでいることを知りました。当時、フュージョンエネルギーについては名前を聞いたことあるくらいでしたが、これをきっかけに調べてみると、「将来的にこのエネルギーができたら、世の中を変えてしまうんではないか」と強い期待とワクワクする気持ちが沸いてきました。

募集要項を見て、自分のスキルでどこまでできるのかと少し躊躇いもありましたが、フュージョンエネルギーに携わりたい想いを抑えることができず、「行動しなきゃ何も始まらない!」と応募したところ、無事に入社することができました。

KFに入社後、どのようなことを担当されていますか?

当社の研究開発拠点「京都リサーチセンター」で建設を進めている「UNITY-1」のプラントオペレーターを担当しています。
UNITY-1は既に、液体金属を配管内に流す試運転や、VST(Vacuum Sieve Tray)と呼ばれるフュージョンエネルギーの燃料である水素同位体を液体金属から抽出する装置の試運転を行っています。これに伴う試運転前の現場環境の整備や、実際の設備の運転、そしてその様子の監視などに取り組んでいます。

例えば、試運転中に想定外の様子を見つけたときや、機器が急に停止してしまったときには、その時の状況をリアルタイムで記録し、社内の他のメンバーにも共有の上、解決策を議論しています。また、既存のマニュアルと照らし合わせながら、実験や試運転を行う上でかかせない確認手順を運転マニュアルやトラブルシューティングに落とし込んだり、内容を更新したりしています。

他にも、UNITY-1を安全に運転できるよう日々のプラント内の整理整頓、掃除、備品の整理など、今後さらに増えてくる設備に備えて準備も行っています。

UNITY-1は今まで取り扱ったことのない、フュージョンエネルギーならではの機器や流体を扱うため、これまで培ってきた運転ノウハウが通用しないこともあり、運用は一筋縄ではいきません。液体金属が配管内で固まらないように注意したり、高磁場を発生させるMHD圧損の試験に向けて磁場の影響を確認したりと、仕組みが多い分、注意しなければならない範囲も広いです。

ただ、これまでの実証プラントなどのオペレーションに関わってきた知見と経験を生かし、チームのメンバーとも話し合いながら、日々業務を遂行しています。

UNITY-1では世界初となる、フュージョンエネルギープラントを模擬した環境での発電技術の実証を目指しています。そのような大きなプロジェクトに関われていることに日々ワクワクしていますし、KFの強みであるエンジニアリング技術が詰まったUNITY-1の間近で仕事できるのは、とても貴重な経験だと思います。

UNITY-1は私が入社したときから着実に形になっているので、その過程を見ると、KFが日本発の技術でフュージョンエネルギーの早期実現に貢献しているんだと実感しますね。

最後に、鈴木さんがKFで実現したいことを教えてください。

私の使命は、プラントオペレーターとして運転技術や設備の標準化・最適化に取り組み、真空設備や発電設備などが長期的に安定稼働できる状態を実現することだと思っています。これまで培った知識や技術力をさらに磨いて、UNITY-1での発電技術の実証や、その先のフュージョンエネルギーの実現に貢献したいです。


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