2025.12.3
NEWS RELEASETECHNOLOGY

京都フュージョニアリング、島津製作所と共同でトリチウム環境下での運転を想定した「ターボ分子ポンプ」の試作機を開発

HOME > NEWS > 京都フュージョニアリング、島津製作所と共同でトリチウム環境下での運転を想定した「ターボ分子ポンプ」の試作機を開発

-フュージョンエネルギープラントの燃料サイクルに欠かせない重要機器を供給-

京都フュージョニアリング株式会社は、株式会社島津製作所とフージョンエネルギープラントを構成するフュージョン燃料サイクルシステム(Fusion Fuel Cycle System)に不可欠な「ターボ分子ポンプ」の試作機を共同開発したことをお知らせします。

今回共同開発したターボ分子ポンプの試作機は、トリチウム環境下での運転を想定し、真空接ガス部の材質がトリチウム耐性のある材料で構成されたオイルフリー仕様です。今後、カナダで建設を進めている統合試験プラント「UNITY-2」で、実際にトリチウムを用いた性能試験を行うとともに、フュージョン開発を進める企業や研究機関への供給を開始します。

■フュージョン燃料サイクルシステムについて
フュージョンエネルギープラントを安定的に稼働させるためには、燃料供給を絶えず行う必要があります。そのため、燃料であるトリチウム(三重水素)などの水素同位体ガスを炉心から排気・分離・循環する技術が欠かせません。京都フュージョニアリングは、この技術を「フュージョン燃料サイクルシステム(Fusion Fuel Cycle System)」として世界に先駆けて開発を進めており、カナダ原子力研究所と設立したジョイントベンチャー「Fusion Fuel Cycles Inc.」のもと、統合試験施設「UNITY-2」の建設をカナダで進めています。2026年までに試運転を開始する予定で、実際にトリチウムを使用した環境下での機器やシステムの試験や統合実証を行う計画です。

■ターボ分子ポンプの役割と共同開発の背景
フュージョン燃料サイクルシステムでは、真空状態の炉心部分から核融合反応を起こさないまま残ったトリチウムや重水素、また核融合反応により生成されるヘリウムなどを含む混合ガスを排気し、そこからトリチウムや重水素を回収して再度燃料として活用します。核融合反応を起こさないまま残ったトリチウムや重水素の移送、真空断熱などの真空を要するシステムにおいて欠かせない機器が、ターボ分子ポンプをはじめとする真空ポンプです。一般的な産業用途の真空ポンプと違い、フュージョンエネルギープラントにおける真空ポンプはトリチウムを含むガスを排気することから、トリチウム環境下での運転に耐えられる設計が必要となります。
そのため、産業用ターボ分子ポンプで世界シェアトップの島津製作所と、フュージョンエネルギー分野における知見を持つ京都フュージョニアリングが共同して、トリチウム環境下での運転を想定したターボ分子ポンプの開発に取り組んでおり、このたび試作機が完成しました。

■共同開発中のターボ分子ポンプの特徴

・トリチウム環境下での運転を想定した仕様
共同開発したターボ分子ポンプの試作機は、トリチウム環境下での長期間の連続安定運転を想定しています。ポンプ内の回転体を磁力で浮かせて支持する磁気軸受型を採用しており、摩耗による部品の交換頻度を抑えられます。また、トリチウム暴露による材料劣化を防止する素材を採用しています。
本試作機はすでに水素と重水素による性能試験を終えており、今後「UNITY-2」において、トリチウムを使用した実環境での運転試験を行い、性能を検証します。

・水素に対する高い排気性能
軽い分子の輸送を強化するドラッグ型ステージ(drag-type stage)と呼ばれる機構を備えており、水素のような軽い分子を含むガスに対しても優れた排気能力を発揮します。大量のガスを短時間で排気することが可能で、圧力変化やガス流量の変化に即座に対応できる高い応答性も備えています。

製品の詳細なスペックは、製品カタログ(英語のみ)をご覧ください。

■製品イメージ画像

■株式会社島津製作所について
島津製作所は、「科学技術で社会に貢献する」を社是として事業を展開し、創業から150年を迎えました。当社が提供する分析・計測機器や産業機器、航空関連機器は、多くの産業分野で広く採用いただき、お客様の事業を通して社会の安全、安心を守り、利便性を向上させる役割を果たしています。また、医療機関における診断、治療、健康測定や、新薬の開発を支援する機器は、健康な日々を過ごしたいという人々の願いを支える大切な役割を担っています。
ウェブサイト: https://www.shimadzu.co.jp

■京都フュージョニアリング株式会社について
当社は、京都大学をはじめ、日本で長年培われてきた核融合研究の成果に基づき2019年に設立された、フュージョンエネルギープラントのエンジニアリング企業です。
プラズマ周辺領域を構成する工学分野において高度な技術力を有しており、主にプラズマ加熱システム「ジャイロトロンシステム」や、核融合反応で発生するエネルギーを利活用する「フュージョン熱サイクルシステム」、燃料を絶えず供給する「フュージョン燃料サイクルシステム」を手掛けています。個々の技術を統合して実証試験を行う統合試験プラント「UNITY-1」、「UNITY-2」建設を進めており、フュージョンエネルギーの早期実現に向けて取り組んでいます。
ウェブサイト: https://kyotofusioneering.com

■本製品に関するお問い合わせ先
京都フュージョニアリング株式会社 Email: biz@kyotofusioneering.com

CATEOGRY
ARCHIVE