
皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。
先日、当社の欧州拠点「Kyoto Fusioneering Europe GmbH(KFEU)」でインターンシップをしているSerena(写真左)とLukas(写真右)が日本を訪れました。二人はフュージョンエネルギーの実現に必要な重水素やトリチウムといった燃料を絶えず供給する「フュージョン燃料サイクルシステム」の技術開発に携わっている若手研究者で、日本にある機器での実験を行うために長期間日本で過ごしました。
2025年最後のブログでは、彼らが日本で行った実験やそこから学んだこと、直面した課題、そして今回の経験が今後どう活かせそうかなどをインタビューしていますので、ぜひご覧ください。
まずは自己紹介をお願いします。
Serena:
イタリアのトリノ工科大学で博士課程の学生として原子力工学について研究しており、2025年5月にインターンとしてKFEUに入社しました。博士課程でエネルギーについて専門的に学ぶ前は、金属加工会社で安全・環境コーディネーターとして数年間働き、エネルギー消費量の分析から廃棄物・排出物管理までを幅広く担当していました。 博士課程では、フュージョン燃料サイクルシステムのエンジニアリングをテーマに博士論文を執筆していたのですが、すでに公開されている論文を参照してデータを集めるだけでなく、実際に機器を使いながら実験を行い、結果の比較を行いたいと思い立ったこともあり、KFEUでのインターンシップに応募しました。

Lukas:
カールスルーエ工科大学(KIT)の機械工学の修士課程でフュージョンエネルギーに関する技術を専門的に学んでおり、2024年9月からKFEUのフュージョン燃料サイクルチームでインターンとして働いています。

来日のきっかけを教えてください
Serena:
日本に来る前は、KFEUでフュージョン燃料サイクルシステムの実験をシミュレーションするための理論モデルや数値モデルを開発していました。
ある日、KFEUのチームメンバーとの議論の際に、日本にある実験装置を使って、私が開発した理論モデルを検証できるかもしれないことを知りました。
実際に実験を行い、シミュレーションが試験データとどの程度一致するかを確認することで、理論モデルをより正確なものにできると思いました。これは自分の研究に活かせるだけでなく会社にも貢献できると思い、メンバーに相談したところ、東京の本社に行く機会を得ることができました。
日本では、フュージョン炉から排気された混合ガスから酸素や窒素といった不純物を分離する「パラジウムディフューザー」という装置を使った実験を行っています。これまでコンピューターでの計算が中心でしたので、実際に機器を扱って実験できるのはとても新鮮で、エンジニアとしてワクワクしましたね。
Lukas:
私の場合、日本でフュージョン燃料サイクルシステムの実験を行い、そのデータを修士論文に活かせないかと考えていました。日本では、フュージョン燃料サイクルシステムに不可欠なポンプに関する実験を行っています。
これらの装置はトリチウムや重水素といったガスを輸送するため、ガスを運ぶ速度や圧力に対する耐性など、ポンプの性能を理解することが極めて重要です。この試験に関わり、データを収集することで、論文に活かせると考えました。そこで、KFEUのHeadである Christian Dayに相談したところ、日本のチームと連携し、私が日本に行く機会を設けてくれました。
日本での仕事を通じて学んだことを教えてください。
Lukas:
理論的な仕事と実験的な仕事の違いを理解できたことは、大きな学びでした。KFEUでは主にコンピューターを使って理論をベースとした研究に取り組んでいましたが、日本ではチームのメンバーと協力しながら、実際に機器を使って実験を行うことができます。この変化によって、より慎重に、安全第一で作業する経験を積むことができましたし、それに伴い責任感も芽生えました。
最初は、実験するための手順が非常に多く、装置を立ち上げるだけでも精一杯でした。しかしすぐに、「これはフュージョンエネルギーに関するシステムだから、複雑なのは当然だ」と自分に言い聞かせました。こう考えるようになってからは、一つひとつ落ち着いて取り組めるようになり、より深く理解できるようになりました。
また、コミュニケーションについても大きな学びがありました。大学ではクラスメートとカジュアルに話すことが多いですが、日本に来てEU拠点よりも多くのメンバーと仕事をするようになってからは、一人のビジネスパーソンとして丁寧なコミュニケーションを取る必要があります。自分が何をしようとしているのか、なぜそれが重要なのかを簡潔に説明し、アイデアを提案する際にはメリットとデメリットを前もって考え、それを明確に伝えることが重要だと学びました。
学生の私はまだ経験が浅く、頭では何をどう伝えるべきか分かっていても、それを実行することに苦労する場面もあります。しかし、チームメンバーが私の意見や提案を理解し、私を信頼して実験を任せてくれたときは、成長を感じて嬉しかったですね。

Serena:
パラジウムディフューザーを使った実験では、様々な発見がありました。専門的なので詳細は控えますが、排気ガスに含まれる不純物が適切に分離されているかを確認するための実験を行い、事前にシミュレーションで算出していた結果と比較しました。実験では、理論上では現れない要因で結果が変動することもあり、実際の機器を使って得られたデータを分析することの重要性を、改めて強く実感しました。
また、Lukasと同じように、コミュニケーションにおいても学びがありました。英語は私にとっても、ほとんどの日本のメンバーにとっても母国語ではありません。そのため、英語で意思疎通を図ることが難しいときも少なくありませんでした。しかし、私がうまく言葉にできなくても、メンバーは辛抱強く私の意図をくみ取ろうと努めてくれたり、必要に応じてジェスチャーや簡単な言葉を使ってくれたりしました。
こうしたやり取りを通じて、メッセージを伝えたいという「思い」や、身振り手振りといった非言語的コミュニケーションがいかに重要かを知ることができました。

仕事以外の日本での生活はどうでしたか?
Lukas:
東京という大都市での生活はとても刺激的です。電車内や交差点、お店は常に人で溢れていて最初は驚きました。また、ルールを順守する日本人が多く、公共交通機関やお店がスムーズに運営されているのも印象的でした。日本に来たばかりの頃は、ドイツとの文化の違いに慣れるのが大変でしたが、徐々にこうした違いを楽しめるようになりました。異なる点が多い一方で、ドイツの文化と似ている点を見つけることが、最近の楽しみになっています。
Serena:
日本で出会った方々の親切心に深く感動しました。そのおかげもあって、日本ではスムーズに生活できています。
元々私は空手を習っており、子どもの頃から日本の文化について少し勉強したこともあったので、日本の風潮には少し理解がありました。しかし、実際にそれを肌で体験できたのは、とても貴重な経験です。
日本にいる間に、私が習っている空手の流派が誕生した沖縄を訪れることができなかったのは少し残念ですが、それは次に日本に来る時の楽しみとしてとっておきます。
滞在中には11月に開催された全社イベント「KF’s Annual Townhall(以下、Townhall)」がありました。出席してみた感想を教えてください。
Serena:
Townhallでは、KFがこの1年で何を達成し、現在どのようなことに取り組み、将来的には何を目指していくのかを知る機会になりました。
経営陣や各部のHeadが会社やチームの目標を共有するのを聞くことで、会社の目指す方向が明確になり、より一層やる気が湧いてきました。
また、KFと取引のある会社についても知ることができ、いかにKFがグローバルな舞台でフュージョンエネルギー開発をリードしているかを実感しました。
Lukas:
日本各地から集まったメンバーと交流し、現在進めている取り組みを知ることで、当社が設立6年という比較的新しい会社にもかかわらず、ここまでに大きな組織に成長したことに感銘を受けました。
また、Townhallはこれまで直接やりとりをしたことのない他部門のメンバーとも交流できる素晴らしい機会でした。直接顔を合わせて話すことで、お互いの人となりや業務内容をより知ることができ、社内の一体感が強まったと感じています。
インターンシップメンバーも参加したKF全社総会のハイライト動画もぜひご覧ください
今回の日本での経験は、今後お二人のキャリアにどう活かせそうでしょうか?
Lukas:
修士課程を修了して社会人として働くうえで、今回得られた経験はかけがえのないものになると思います。
ガスを使う実験を安全に配慮しながら慎重に実施するといった技術的なスキルだけでなく、日本にいる多国籍メンバーと日々コミュニケーションを取る中で、グローバルな環境で働く経験を積むことができました。
また、メンバーが実験を私に任せてくれたことで、セルフマネジメントの力も身につきました。修士論文の執筆もある中で、実験の優先順位を判断することは大変でしたが、「自分で決めて進める」という経験を積むことで、自信を持ってタスクをこなせるようになりました。日本での滞在中に多くの面で成長できたと思っていますので、改めて、私を支えてくれたチームに感謝しています。
Serena:
私のKFでのインターンシップは間もなく終了しますが、最後に日本で実験を行えたことはとても有意義な経験でした。インターンシップ後はイタリアの大学院に戻り、博士課程の研究を続けていきます。
今回、KFEUで取り組んできたシミュレーションと日本で行った実験を通じて、自分の研究分野に関する新しい知見を得ることができました。今後はその知見をもとに、さらに研究を進められることにワクワクしています。
また、Lukasも話したように、様々なバックグラウンドを持つメンバーと働くことで、よりグローバルで多角的な視点を得ることができたのも、今回の日本滞在で得られた大きな成果の1つです。
SerenaとLukasが共有してくれたように、当社はグローバル企業として、日々成長しています。フュージョンエネルギーは1つの国、あるいは1つの会社だけでは実現できません。
2026年も当社は、様々なパートナーと協力して研究開発を前進させ、フュージョンエネルギーの実現に向けて成長を続けてまいります。
京都フュージョニアリングでは、エネルギーの未来を一緒に切り開くメンバーを募集しています。
募集内容はこちらのページをご覧ください。 公式SNSでも情報発信をしています。
X https://x.com/Kyotofusioneer
Facebook https://www.facebook.com/KyotoFusioneering/
LinkedIn https://jp.linkedin.com/company/kyoto-fusioneering