2026.02.4
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Behind the Fusion Scene: Alexander Hinz

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In a nutshell:
2024年9月にPlant Technology部門の一員として、京都フュージョニアリング(KF)に入社したAlexander(Alex)は、ドイツやイギリス、日本で計10年近くにわたり、積み重ねてきた真空や低温プラズマ、半導体技術などの研究経験を活かし、現在は液体金属ブランケットで生成されるトリチウムの水素同位体を検出するセンサーを開発しています。

京都フュージョニアリング(KF)での役割について教えてください。

Plant Technology部門のフュージョン燃料サイクルシステムの開発を行うチームに所属し、フュージョンエンジニアとして、主にトリチウム抽出システムやトリチウムセンサーの開発に取り組んでいます。

現在は、大きく分けて2つのプロジェクトを担当しています。1つ目は、当社のイギリス拠点(KFUK)のメンバーと共に進めている、液体金属ブランケット内のトリチウムを監視するための「水素同位体透過センサー(HPS)」の開発です。基本的なコンセプトは社内ですでに固まっていますが、現在は、フュージョンエネルギーを模擬した環境下で発電技術の実証を行う「UNITY‑1」の液体金属ループに実装する上での課題解決に取り組んでいます。

このセンサーを設置するのは、液体金属ブランケット内で生成された水素同位体を回収する「Vacuum Sieve Tray (VST)」と呼ばれる機器の入口付近なのですが、液体金属であるリチウム鉛(LiPb)の中に完全に浸した状態で設置しなければなりません。リチウム鉛に長時間浸すことによるセンサーへの影響を分析し、正確に動作するように調整する必要があり、とても難しいチャレンジです。

2つ目のプロジェクトは、「電気化学式センサー」の開発です。この技術は、もともと約20年前に、とある日本企業が金属を鋳造する時に発生する水素を感知するために開発したものです。現在は当社のビジネス部門や日本のメーカーと密に連携しながら、このセンサーをフュージョンエネルギーでも使えるように仕様を最適化する作業を進めています。

今日当社が取り組んでいるのは、これまで世の中に存在しなかった技術です。データを集めるためにも、シミュレーションを徹底して行い、実験を重ね、設計を何度も見直す日々が続きます。

必ずしも、最初から狙い通りのデータを得られるわけではありませんが、試行錯誤を繰り返す過程こそが研究開発の醍醐味だと感じていますし、これまでは計算によるシミュレーション結果だったものが、実験を通じて実データとして得られた時は、大きなやりがいを感じますね。

KFに入社するまで、フュージョンエネルギー分野に直接的に関わる経験はありませんでしたが、これまで私が研究機関で培ってきた材料および真空技術に関する経験や知識を、存分に活かすことができていると感じます。

そもそもエンジニアや研究者としての道に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

父がエンジニアでしたが、私自身は最初からエンジニアを目指していたわけではありません。私が高校生だった頃、卒業後はドイツ軍への入隊や法学部進学など、さまざまな進路を考えていました。

そんな中で、最も大きな影響を受けたのが兄の存在です。兄がドイツのキール大学で科学を専攻していたことから、ちょっとした好奇心で兄の大学について調べてみたところ、電気工学や材料科学といった学科があることを知りました。

正直、当時はまだ自分が何をやりたいのか明確ではなかったため、物理・化学・工学を幅広く学べる材料科学を選べば、そのうち将来の方向性が見つかったときに役に立つと考え、材料科学を専攻することにしました。

材料科学学科の授業の中でも特に印象に残っているのが、かつてモスクワで研究所の所長を務めていたロシア人物理学者による真空工学の講義です。彼の講義は非常に魅力的だったこともあり、真空技術の奥深さに一気に引き込まれました。

ちょうどその頃、学生アシスタントをしてみようと思っていた教授から声をかけてもらい、彼の研究に関わることになりました。これが真空工学を専門として学び始めるきっかけであり、この技術が多くの産業分野に応用できることを知り、とても魅力を感じるようになりました。

真空技術の研究者として、研究室ではどのような仕事をしていたのですか?

研究初期は、半導体産業で用いられる薄膜技術に携わっていました。マグネトロンスパッタリングや真空蒸着という手法を用いて、金属やポリマー製の薄い膜を作っていました。

その後博士課程では、低温プラズマ中でのダスト粒子(微粒子)生成に関する基礎研究に取り組んでいました。これはフュージョンエネルギーで扱う高温プラズマとは異なるテーマです。

真空工学の研究を進めるにつれて、現代には欠かせない半導体技術への関心が一層強まっていきました。博士課程の途中には、指導教員が客員教授を務めていたご縁で、九州大学でシリコン基板上に酸化亜鉛の薄い膜の層を作る研究の機会も得られました。簡単に言えば、LEDやセンサー、高効率パワーデバイスといった電子部品を実現するために、極めて薄く精密な材料の層を作り上げるものです。

そしてこの九州大学での研究が、私の人生で初めて日本で過ごす機会となりました。もちろん最初は言語の壁などがありましたが、食べ物や人との関わりなど、文化的にも非常に居心地が良く、「将来は日本でキャリアを築きたい」という思いが、その後も何度も頭をよぎるようになりました。

博士課程を修了する間際では、実際に産業にインパクトを与える技術開発に携わりたいと考え、ヨーロッパや日本の半導体企業に応募しましたが、残念ながら採用には至りませんでした。正直、かなり落ち込みましたが、「今はまだそのタイミングではなかった」と気持ちを切り替え、ポスドクとして博士課程の後も研究を続ける道を選ぶことにしたのです

こうしてケンブリッジ大学で2年間、ワイドバンドギャップ半導体の成長に関する研究を行うことになりました。

アカデミアの分野で研究を続けることを決めたAlexさんが、再び産業界を目指すようになったきっかけは何だったのでしょうか?

ケンブリッジ大学での研究後も、過去に産業界で働こうとしたときに味わった苦い思い出から、しばらくはアカデミアに留まっていました。

そんな中、博士課程時代の指導教員が、ドイツのフラウンホーファー研究機構の求人情報を紹介してくれました。私のこれまでの研究内容に非常に近い専門性が求められていたのもあり、そこでさらに4年間、研究を続けることになりました。

それでも、産業界で働くという思いを完全に手放すことはできませんでした。研究が進めば進むほど、「直接的に産業に貢献したい」という気持ちがますます強くなっていったのです。そこで、半導体分野に限らず、真空技術など自分の強みを活かせる領域まで視野を広げて仕事を探し始めました。その中でたどり着いたのが、フュージョンエネルギーでした。

フュージョンエネルギーについては、もともとご存じだったのですか?

私が通っていたキール大学は、Wendelstein7‑X(W7‑X)ステラレーターが稼働するマックス・プランク研究所の比較的近い場所にあり、ドイツ国内でも有数のプラズマ物理の授業や研究が盛んな大学の一つです。

学生時代、W7‑Xがまだ建設中だった頃にマックス・プランク研究所を見学する機会があり、フュージョンエネルギーが環境問題の解決の切り札となる可能性があることを知ってワクワクしていました。その後、ケンブリッジ大学にいた頃も、フュージョンエネルギーの動向には常にアンテナを張っていました。

数あるフュージョンエネルギー企業の中で、なぜKFを選んだのですか?

フュージョンエネルギーの周辺技術のエンジニアリングを主軸とするKFのビジネスモデルがユニークで面白いと思ったからです。ただ、KFを知ったきっかけは本当に偶然でした。

半導体分野の研究をしていた頃、引き続き「産業に貢献したい」という気持ちがあったので、転職活動をしていました。日本で働くことも視野に入れていたので、外国籍向けの求人プラットフォームに登録し、日本での仕事を探していました。

しかし当時の日本では、外国人エンジニアが日本でR&Dをするポジションに就くことはまだ一般的ではありませんでした。それでも粘り強く求人を探していると、偶然KFを見つけました。

KFのウェブサイトを見てみると、KFは炉心プラズマではなく、フュージョンエネルギープラントの周辺エンジニアリングに取り組んでいることを知り、「これなら自分の経験を活かして貢献できる」と強く感じました。

特に、プラントの持続的な運転に欠かせないフュージョン燃料サイクルシステムの研究開発に、私が培ってきた真空工学の知見などを生かせると確信し、すぐにエンジニア職へ応募しました。応募書類や面接で、自分の想いを伝えた結果、チームの一員として迎えていただくことができました。

日本でKFの一員として働いてみて、どのようなことを感じていますか?

KFで働き始めて、「入社前の期待は間違いではなかった」と確信しました。実際に半導体や真空技術のバックグラウンドが、センサー開発において役立っています。さらに、異なる分野や国で積み重ねてきた経験が、フュージョンエネルギーの技術開発に応用できており、大きなやりがいを感じています。

また、当社は非常に国際色豊かなチームです。日本で研究した経験や、イギリスで働いた経験は、異なる文化を持ったメンバーと協力してプロジェクトを進める上で、とても活きています。多様な国籍・経験を持ったメンバーと協力しながら仕事ができる環境は、私にとって本当に楽しいです。

最後に、KFそしてフュージョンエネルギー分野で実現したいことを教えてください。

直近の目標は、技術開発の成果を実際の製品として世に送り出すことです。現在開発しているHPSや電気化学式水素センサーを当社のビジネス部門が市場に展開できるように、技術部門の一員として開発を推し進めています。

長期的な目標は、世界初となるフュージョンエネルギーの実証プラントのこの目で見ることです。そして、それに続いてスケールアップしていくフュージョンエネルギープラントの開発に、自ら現役のエンジニアとして今後も長期的に関われたらと思います。

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