2026.02.2
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THE FUSION ERA – ゴリ文が学ぶ#10 / フュージョンエネルギーに必要な真空技術とは?

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皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。

昨年12月、東京ビッグサイトで真空工学をテーマにした「Vacuum2025真空展」が開催され、真空技術を扱う企業・団体が一堂に会しました。当社もブースを出展したほか、CEOの小西が登壇し、フュージョンエネルギーと真空技術がいかに密接に関わっているかを紹介しました。

そこで第10回目となる今回のゴリ文シリーズでは、「そもそも真空とは?」というところから、フュージョンエネルギーにおける真空技術の重要性や、真空技術に欠かせない機器の一つである真空ポンプの役割、そして日本のモノづくり企業と共同開発に取り組む当社の活動について、解説していきます。

そもそも、真空ってなに?

「真空」と聞くと、真空パックなどのイメージから「空気がまったく無い状態」を想像されるかもしれませんが、実はそうではありません。

JIS(日本工業規格)によると、「真空」とは「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」と定義されています。つまり、ポンプなどを用いて配管や容器の中から空気を吸い出し、気圧が大気圧よりも低くなれば、少し空気や気体が残っていたとしても「真空」と呼ぶことができます。さらに、同じ「真空」の状態でも圧力の値に応じて、「低真空」や「高真空」などと分類されています。
ご参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/vss/65/8/65_20180914/_pdf

左から袋の中の空気を抜き、真空にしていくイメージ図。一番右だけでなく中央の袋も真空と呼べる

真空技術は身の回りでも使われている!

真空技術は、私たちの日常生活にも広く使われています。

わかりやすいものでは、食品の鮮度が落ちるのを防ぐ用途として。例えばコーヒー豆の場合、豆の入った袋から空気を抜き酸素と触れづらくすることで、豆が酸化するのを防ぎ、香りや風味を保つことができます。

また、魔法瓶(タンブラー)でも真空技術が用いられています。瓶の内側と外側の間を真空にすると熱を伝える空気がなくなるため、例えば熱い飲み物の場合には外側に熱が逃げにくくなり温度を保ちやすくなるのです。

さらに、ストローで飲み物を吸い上げる仕組みも真空によるものです。ストローを吸いストロー内の気圧を下げると、ストローの外側にある大気圧のとの圧力差が生まれ、飲み物が押し上げられます。

フュージョンエネルギーで使われる真空技術とポンプの活用

フュージョンエネルギープラントは「巨大で複雑な真空システム」とも言われていて、真空技術が欠かせません。どのような用途で用いられているのでしょうか?

答えから言うと、真空技術は核融合反応を起こすための「環境づくり」に用いられています。

核融合反応を起こすには、燃料となる水素同位体(重水素やトリチウム)を、固体・液体・気体 に続く第4の状態である「プラズマ」に変える必要があります。プラズマとは、以下の図で示すように、原子が電子と原子核に分かれ、電気を帯びた粒子が自由に動き回る状態です。

物質の状態変化のイメージ図

燃料をプラズマにし続けるためには、炉の温度を数億度にまで上げる必要があり、ここで真空技術が活躍します。

例えば、磁石を使って磁場を発生させ、その中でプラズマを閉じ込め、燃料同士をぶつけ合う「磁場閉じ込め方式」においては、プラズマ状態を維持させて、核融合反応の効率を高め、維持していくためには温度、真空、磁場のバランスが非常に重要となります。

そのため、真空条件を作り出す真空ポンプは、核融合反応を起こす上で欠かすことの出来ない装置となります。
※閉じ込め方式に関しては、こちらのゴリ文ブログをご覧ください

また、燃料を炉心から排気し、不純物を取り除き、再び燃料として投入する「フュージョン燃料サイクルシステム」でも真空技術が用いられます。

水素は、化学の周期表で最初に登場する=最も小さく軽い元素なので、金属などの材料をすり抜ける特徴を持ちます。しかし、燃料であるトリチウムは放射性物質のため、安全性の観点から透過を避けなければなりません。そこで、高圧ではなく常圧または真空下で燃料を循環させ、安全性を確保します。
※フュージョン燃料サイクルシステムについてはこちらをご覧ください

フュージョンエネルギープラントで使うポンプの特徴とは?

真空状態を作るために欠かせないポンプですが、フュージョンエネルギープラントで使用するには特殊な条件に適応している必要があります。

まず、燃料であるトリチウムガスへの高い耐久性が求められます。放射性物質であるトリチウムは、ゴムや樹脂などの有機物と反応し、劣化させる性質があります。そのため一般的なゴム製のパッキンを用いたポンプではなく、オイルフリーであり、かつトリチウム耐性を有する素材で構成されたポンプである必要があります。

また、軽い元素でも効率的に輸送できる性能が求められます。フュージョンエネルギープラントは水素やヘリウムなど、軽くて小さく、空間を素早く動き回る元素を扱います。そのため、軽い元素も輸送できる性能が求められ、特殊な構造が求められます。

また、真空排気性能がガス依存性を有する可能性があるため、各種ガス条件で実プラントのガス種をどの程度効率的に輸送できるのかの性能試験を行う必要があります。

日本の「ものづくり力」を結集したポンプ

当社は現在、フュージョンエネルギーに関する独自のノウハウと日本企業が持つ「ものづくり力」を掛け合わせ、フュージョンエネルギープラントの環境に適したポンプの開発を進めています。そのなかからいくつかをご紹介します。

  • 粗引き真空ポンプ:大気圧の状態から一気に圧力を下げる「粗引き真空ポンプ」を三國重工業と共同開発しています。大気圧のままでは圧力が高すぎて機能しないポンプを使う際に、使用します。
  • ターボ分子ポンプ:粗引き真空ポンプで気圧を下げた後、高真空を作るため、高速回転でガスを弾き飛ばす「ターボ分子ポンプ」を開発しています。直近では島津製作所と試作機を開発しました。
  • メタルベローズポンプ: アコーディオンのような金属のじゃばら(ベローズ)を伸縮させて気圧を調整し、ガスの流れを操作するポンプです。ゴムやオイルを一切使わない「フルメタル製」にすることで、トリチウムへの耐久性を実現しています。
フュージョンエネルギープラントで使われるポンプの例

当社が日本で開発を進めているこれらのポンプは、今後カナダで建設中の統合型トリチウム燃料サイクル試験施設「UNITY-2」において、実際にトリチウムを使った試験をしていきます。

今回ご紹介した真空技術もその一つですが、実は、身近なところで広く使われている技術の多くがフュージョンエネルギーに用いられています。

今後もフュージョンエネルギー実現に必要不可欠な要素技術やフュージョン燃料サイクルシステムの開発状況をブログなどで紹介していきますので、引き続きご注目ください。


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