2025.06.23
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THE FUSION ERA – フュージョンエネルギーの新たな燃料貯蔵システム装置が到着!

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皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。

先日、当社に新しい実験装置が届きました!

この装置では、核融合反応を起こす燃料となるトリチウムや重水素を絶えず炉心に供給するために重要な「燃料サイクルシステム」のうち、一部機能の試験を行います。今後、カナダに建設する「UNITY-2」にも組み込まれます。

今回のブログでは、この研究開発を担当する当社エンジニアのLee Suneui(イ・ソニ)に、装置の特徴や試験内容などを聞きました。


フュージョン燃料サイクルシステムを実証する「UNITY-2」の仕組図

この装置について教えてください。

今回完成した実験装置では、核融合反応の燃料であるトリチウムや重水素を安全かつ効率的に貯蔵・取り出す技術を検証します。(上図の「Fuel Management System」)

また、トリチウムや重水素は水素同位体の一種です。これらは常温ではガス状態で、体積が大きく、そのままガスとして保存するには都市ガスなどを貯蔵する球状のガスタンクのようなものが必要になってしまいます。体積が大きくなるので、コンパクトなフュージョンプラントには向いていません。

そこで当社は、ZrCo(ジルコニウム-コバルト)という水素吸蔵合金を用いた貯蔵装置を開発しています。ZrCoは特定の温度・圧力条件下で水素同位体の吸収・放出量を調整できる特性を持っていますが、常温・大気圧での吸蔵や放出量はほとんどありません。また、このZrCoは自身の重量に対して多くの水素同位体ガスを吸収できる能力を持っているため、先に紹介したガスタンクよりもコンパクトに貯蔵することができます。

今回新たに製作した装置では、将来のフュージョンエネルギープラントで燃料をZrCoへ貯蔵する条件を確立し、かつこれらを繰り返し使用したときの変化について試験します。なお、この試験では、放射性物質であるトリチウムは使用せず、水素や重水素を使って試験を行います。

以前投稿したブログ「ゴリ文が学ぶ#6」でも、燃料貯蔵用の装置に関する紹介がありました。
この装置との違いを教えてください。

(※「ゴリ文が学ぶ #6 / フュージョン燃料サイクルを構成する機器の開発現場をレポート」はこちら

新しい装置は、UNITY-2にこの燃料貯蔵システムが組み込まれた時を想定した仕様になっています。
UNITY-2の設計は、水素同位体に含まれる不純物の除去や核融合炉の心臓部となるプラズマを維持する容器への燃料導入法の模擬など、複数の仕組みが連動します。効率的に水素同位体ガスを貯蔵したり循環させたりするため、調整用のタンクを2つにしたほか、ポンプなどの機器の位置を最適化したり、高い真空状態を実現するために配管の太さを調整したりするなど、私がチームメンバーと話し合いながら考えたアイデアが詰まっています。

実際にソニさんたちのアイデアが詰まった装置を見て、どう感じましたか?

もともと装置が来る前に3Dモデリングで装置のイメージはできていましたが、実際に届いたものを見てその大きさに驚きましたね。
これからこの装置を使って、UNITY-2のオペレーションを想定した試験の工程を組み、実際に試験をしてデータを取得し、UNITY-2の開発にさらに貢献できると思うと非常に楽しみです。

現在この装置を使って、どのようなことに取り組んでいますか?

まずは新しい装置の初期性能を確認しています。真空にしたり、高温状態にしたりして、現段階の性能・水素の排気にかかる時間などを記録します。

今後試験を続ける中で、意図したものと異なる結果を得られた際に、装置の元の状態によるものなのか、それとも装置を使っているうちに性能が変化してしまったのかを把握するためにこの過程は欠かせません。

  • どのようなデータをこの段階で取得しておくべきか
  • 試験を繰り返す中で、観察結果と直前の試験結果が異なる場合、それが許容範囲内の違いなのかどうか
  • 予想外の結果が得られた時、次のステップとなる改善方法をどのように考えるか

といったことを、フュージョンエネルギーの領域で経験豊富な芦川さんとメンターの菊池さんの3人で一緒に考えながら試験を進めています。

芦川(左)と試験をするソニ(右)

今後、どのような試験を予定していますか?

引き続きZrCoの機能に関する試験を行っていきます。
ZrCoに何度も水素を吸蔵させると、次第にその機能が劣化し、吸蔵できる量が減ることが知られています。トリチウムを使用する環境ではZrCoの交換は簡単ではないので、圧力と温度を制御して水素吸蔵量を回復させる実験を繰り返し行い、その様子を観測する予定です。

「ZrCoに対して大気吸着の影響が低いほうが、水素吸蔵特性が良い」とされているのですが、新しい装置は、前の装置と比べて大気吸着の影響が低く、より良い真空度の条件でZrCoの水素吸蔵に関する検証ができます。

また、購入時には数ミリだったZrCoに水素ガスを入れて加熱処理すると、以下の写真のようにパウダー状態になり、固体のときよりも取り扱いが難しくなってしまいます。実際にこの仕組みをUNITY-2で使用する前に、この装置を使ってパウダー状態のZrCoを安全に取り扱う方法を確立予定です。

立方体形状のZrCo(左)と、真空中での加熱処理でパウダー状になったZrCo(右)

以前インタビューでもお伝えしましたが、これまで取り組んできた装置の設計がついに形になり、実際に試験を行う段階に入ったことで、自分自身が日々成長しながら新たな挑戦を重ねられていることを実感しています。

このプロジェクトを通じて得られる学びや経験は非常に大きく、大きなやりがいを感じています。

今後も挑戦を恐れず、UNITY-2の開発とその先のフュージョンエネルギープラントの実現に貢献しながら、技術者としてさらに成長していきたいです!

ありがとうございました!
燃料貯蔵システムに関する試験の今後の展開も楽しみですね!


ソニさんが取り組む燃料貯蔵システムの試験は、フュージョン燃料サイクルシステムの確立に向けた重要なステップです。今後も技術開発の様子をSNSやブログを通じて情報を発信していきますので、ぜひご注目ください!

今後とも京都フュージョニアリングにご注目ください。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう!

THE FUSION ERA:https://kyotofusioneering.com/news_category/blog


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