2023.08.18
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: 關 直樹

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In a nutshell:
幼いころから気になるモノの本質について考えていた關(せき)さん。その探求心から、大学では物質や現象をミクロに研究するため原子工学を専攻し、その後大手の総合エンジニアリング会社に就職しました。エンジニアとしてのやりがいを追求しつつ、大学時代にその可能性に魅せられたフュージョンエネルギーの実用化に挑戦したいとの想いから、2022年に京都フュージョニアリング(KF)へ転職。現在は熱交換器のエンジニアとして、核融合炉周辺機器の研究開発を担当する傍ら、マネージャーとしてメンバーと協力しながら核融合発電試験プラント「UNITY」の完成に向けて取り組んでいます。



大学では原子工学を専攻したとのことですが、ぜひいきさつについて教えてください。
小さいころから身の回りの現象について深く掘り下げることが好きで、気になるモノや機械があれば、分解したり、改造したりしていました。例えばミニ四駆を早くするにはどうすればいいのか、速いモーターはなぜ速いのか、ボディのどこを軽量化すれば速くなるのか。その現象がなぜ起こるのかを深く知りたいという好奇心が、子どもながらに旺盛だったと思います。

そうした性格もあり、「自然界に存在する物質の解明や現象の説明を、もっとミクロな視点から研究したい」と考え、大学で原子工学科の量子理工学を専攻しました。研究室では “燃える氷”と呼ばれるメタンハイドレートという天然ガスの分子運動に関する研究を行っていました。具体的には、中性子非弾性散乱という実験を通じて、メタンハイドレートの分子の動きやエネルギーの測定をしていたのですが、シミュレーションと実験結果を一致させることで現象解明に至ったり、未知の現象に気づくことができたりと面白かったです。

卒業後は研究テーマで取り扱ったエネルギー分野に強い総合エンジニアリングの会社に就職しました。

当時はどのような仕事を担当されていましたか?
大気圧とは異なる圧力で気体や液体を貯蔵するための圧力容器や、温度が異なる2種類または複数の流体間で熱を移動させる熱交換器のエンジニアリングに携わっていました。シミュレーションを軸とした設備の設計だけではなく、ベンダーから部品を調達し、実際に現地で設備を建設するなど、一連の作業に関わることができました。いわゆる大企業だったため、事業のスケールも大きく、日本国内にとどまらず、カタールやマレーシアといった国に海外赴任をしていた時期もあります。海外赴任中は、現地の方や出稼ぎにきている国外のメンバーと働くことが多かったのですが、文化や仕事に対する考え方が異なるため、マネジメントには苦労しました。特に最初のうちは、同じ目標を共有しながらうまく機能するチーム作りができるか不安でしたが、分け隔てなくコミュニケーションを取り、お互いの価値観を尊重することで、徐々にチームとしてのまとまりが感じられるようになりました。最終的にはチーム全体で高いモチベーションを持ちながら働くことができたので嬉しかったですし、キャリアの中でも貴重な経験だったと思っています。

また、プロジェクトの全体管理を担当していたので、現地の作業員やベンダーといった関係者とのスケジュール調整から、トラブル発生時の対処、さらに設計通りに建設が進まないことを見越した別案の準備まで、幅広い業務を経験しました。特に全体管理をしていると、スケジュール通りに完工しなければならないプレッシャーも大きく、現地の状況とどう折り合いをつけていくのか、大変なことも多かったです。しかし、何もないまっさらな土地に自分が携わった設備が建設され、それが作動しているのを見た時には大きな達成感を感じました。それと同時に、現地に赴く機会が多かったこともあり、実際に建設することを意識した内容で設計に落とし込むことの大切さも学ぶことができました。エンジニアとして貴重な経験を積むことができましたね。

2022年にKFに入社されました。フュージョンエネルギー(核融合)の世界に飛び込もうと思ったきっかけは?
初めてフュージョンエネルギーについて耳にしたのは、私が大学生の時でした。他の化学反応と比較して少ない燃料から膨大なエネルギーを生み出せることにとても驚きましたが、当時は周りの学生や教授、私自身を含めて実現にはまだ遠い「夢のエネルギー」という印象を持っていました。

ただ当時のことはその後も忘れることはなく、就職後も頭の片隅にフュージョンエネルギーという言葉が残っていました。そんな中、ふとニュースで日本初の核融合スタートアップが立ち上がると知りました。「夢のエネルギー」と認識していたフュージョンエネルギーの実現の可能性が少しずつ高まっているのを感じ、核融合発電を民間企業の立場から実用化するという未知の領域に挑戦したいと強く思うようになりました。

転職という選択肢を考えた時に、大企業で安定していた環境から離れることで家族に迷惑をかけないだろうか、という葛藤もありました。ただ、幸いにも自分の知識やこれまでの業務経験を棚卸してみた時に、大学で学んだ原子物理学や前職で深めた工学的な知識を活かせる領域であったこと、またフュージョンエネルギーという新しい分野の専門性をいち早く身につけたいという自分自身の想いが強かったこと、そして家族からの応援もあって、道を選ぶ決心がつきました。

現在KFではどのようなプロジェクトに取り組んでいますか?
私は、プラントテック(核融合炉周辺機器)チームに所属しており、核融合反応により発生するエネルギーから熱を取り出し、発電などに活用していくために必要な核融合炉の周辺機器の研究開発を行っています。

現在は、「UNITY」と呼ばれるフュージョンエネルギーによる発電を世界で初めて実証する試験プラントの建設に注力しています。その一部となる熱交換器のエンジニアとして、1000℃を超える高温の液体金属から隣接する低温の流体へ熱を移す仕組みの設計開発や材料の選定を担当しています。

フュージョンエネルギー業界、そしてスタートアップであるKFに入社して感じたことは?
まず業務に関しては、そこまで大きなギャップは感じませんでした。というのも、KFはまだ工業化前の研究開発段階のものが多く、そこに関わる業務が中心になることは予想がついていましたし、前職に近い領域を担うことになっていたため、直接的に前職の経験を活かすことができているからです。例えば、今取り組んでいる熱交換器は、京都大学で長年培われた世界最先端の“SiC/SiCコンポジット”と呼ばれるシリコンと炭素を含む材料による技術が応用されており、前職で扱っていた熱交換器とはタイプが異なります。しかし、熱交換器そのもののしくみや構造、機器の腐食や耐久性を考慮した材料の選定など、前職で得た機械工学の知識を下地として活かすことができています。

一方で、KFに入社したからこそ経験できているな、と思うこともあります。例えば、外部の方との連携。KFはまだ自社の工場や研究施設がないため、様々な企業と共同でプロジェクトを行っています。外部の研究者やエンジニアの方々と協力して研究開発を行うことにより、他の視点からの意見を得られるので勉強になりますし、自分たちだけでは思いつかないような考え方に触れられるのはとても刺激的ですね。

また、「これが正しいと思うから挑戦したい」と自ら提言したときに、大企業では実現までに社内でクリアしなければならないハードルがいくつもあり、場合によっては実現が困難な場合も多くあります。一方で、スタートアップでは社員一人ひとりの原動力が、より直接的に会社の前進力になる実感があります。KFでは一人ひとりがフュージョンエネルギーという前人未到の領域で日々試行錯誤を続けており、大変なことも多いですが、実現に向けて一歩一歩進んでいる実感があり、挑戦自体にとてもやりがいと楽しさを感じています。

特に、フュージョンエネルギーの早期実現という目標に向けて、代表の長尾をはじめ社員一人ひとりが熱い想いを持って働いていることは、入社直後から今日まで実感しつづけていることで、この熱量の高さもスタートアップの良さなのかなと思っています。

今後、フュージョンエネルギーの実現に向けて、KFの技術チームはどのようなことに取り組む必要があると感じますか?
メンバーそれぞれの得意分野をきちんと整理し、チーム内で共有することに今以上にしっかりと取り組んでいきたいです。
ありがたいことに事業の拡大とともに、次々と新しい仲間が増えています。ほとんどの方が中途採用で、すでにこれまでのキャリアで特定の分野での経験を積み、専門的な知識を持っています。研究開発を行う上では、各々が持っているノウハウをチームの中で整理し、必要な知識を取り出し、組み合わせることが、プロジェクトを完遂するための最適解を導き出すために重要です。

また、私が所属するプラントテックチームは燃料サイクルや熱サイクルなど複数のチームに分かれています。チームをまたぎ、プロジェクトを兼任することも多く、特定のメンバーに業務負荷がかかってしまう場合もあるのは事実です。これを避けるためにも、メンバーが持つ知識やスキルを整理し、それに基づいてプロジェクトに割り当てることが大切だと考えています。

關さん自身はKFでどのようなことを達成したいですか?
まずは現在建設段階にある「UNITY」を完成させることです。ものづくりの分野では、一つのプロジェクトに設計や調達、建設以外にも安全管理など必要な工程が多く、完了までに年単位で時間がかかることも少なくありません。「UNITY」も同様に、構想の発表から建設までに数年を想定し、動いています。予定通りにならないこともありますが、プラントテックチームはもちろん会社一丸となって、日々奮闘しています。これができたときには、これまでとは異なる達成感を得られると思うので、しっかりやり切りたいです。

中長期的には、日本初の核融合プラントの建設に携わってみたい。自分の心の中に常にある「人々が安全安心、そして幸せに暮らせる世界に貢献したい」という想いを、フュージョンエネルギーの早期実現に向けた日々の取り組みに活かし続けていきたいです。

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