2023.09.29
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: 吉田 隆司

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In a nutshell:
製造機器メーカーの機械技術者としてキャリアをスタートしたのち、筑波大学のミラー型装置関連の仕事をきっかけにフュージョンエネルギーの世界へ飛び込んだ吉田さん。その後日本を代表するフュージョンエネルギー研究機関で国際的なプロジェクトに携わるなど、豊富な経験を積みました。2021年に「まだまだフュージョンエネルギー業界で技術革新に挑戦したい」という熱き想いと共に京都フュージョニアリング(KF)に入社。現在はElectro Magneticチームの一員として品質管理を常に念頭におきながら、組織が拡大・成長するKFを豊かな経験と次世代への技術継承をもって支えています。


吉田さんのKF入社以前のキャリアについてお聞かせください
新卒で製造機器メーカーに就職した当時は、最新鋭の原子力発電所の建設が相次ぎ、一方で旧タイプの維持管理をしなければならない時期でした。工場内ではその誰も実施したことのない新工法などを含めた製造技術に関して基礎から教え込まれ、現地ではメンテナンス対応に追われ、目が回るほど忙しい日々を過ごしていましたね。

そこから2年ほど経ったとき、開発機器設計部門の課長に声を掛けられ、筑波大学が手掛ける磁場によるプラズマ閉じ込め装置「Gamma 10/PDX(G10)」に携わる機会をいただきました。これが私のフュージョンエネルギーに関わるキャリアの始まりです。

そこからは物理の知識が必要になり、最初はわからないことだらけでしたので休日は図書館や本屋にこもってひたすら勉強していました。ある程度の知識がないと、質問することさえできないので必死でしたね。

1980年代は主にMRI検査で使われるような、液体ヘリウムをたっぷり蓄えた高磁界を利用する核磁気共鳴装置の開発から量産体制までの試験検査に取り組んでいました。1990年代になると、超伝導技術は「高磁場、超大型化、強制冷却」の時代となり、超伝導コイルによるプラズマ閉じ込め計画が進められていました。そんな中、量子技術開発機構(QST)の前身となる日本原子力研究所の「DPC-TJ計画」に参加することになりました。これは第一工学試験等において電流密度が高い核融合炉用コイルの開発をするものです。国の研究機関との共同プロジェクトに携われたことは私のキャリアにとって実りあるものでした。
また、当時そこで深夜まで試験をするなど、苦労を共にしたメンバーと約30年ぶりにKFで奇跡的な再会をしたときは目頭が熱くなりました。

その後も多くのことを経験してきました。核融合科学研究所(NIFS)では大型ヘリカルフュージョンエネルギー装置であるLHDのポロイダルコイルの素線を作るところからCICCと呼ばれるケーブルインコジット導体の製缶、巻き線、積層とコイル冷却、そして絶縁強度を測る励磁試験までの一連を担当できて面白かったです。

九州大学にあるアジア最大の球型トカマク(QUEST)の建設に携わった時は、真空容器内壁の高温壁設置と冷却水回路の設置作業とその後の耐圧や真空状態を確認する試験を進めていました。
日本と欧州が共同でフュージョンエネルギー実現を目指す「JT-60SA」計画にも参画しましたね。ドーナツ型の真空容器に巨大なD型トロイダルコイルを滑り込ませながら、他の部品に接触させずに据え付け作業するなどスケールの大きさと求められる作業の精密さに圧倒されました。

改めて振り返ると、これまでのキャリアでは毎日なにかしらの壁に直面しながら、それを乗り越えるべく挑戦を続けてきた気がします。何度も心が折れそうになりましたが、今ではそれが人生なのかなと思います。近年は壁を突き破ることに心地よさを感じるようにもなってきていますね。

そのような豊富な経験をお持ちの吉田さんがKF に入社したきっかけは?
これまで30年以上にわたり、フュージョンエネルギーの実現を追い求めてきたのですが、その道のりは長く、前職を定年退職する際に「我がフュージョンエネルギー人生もこれで終わりかな」と肩を落としていました。しかし、偶然にもKFについて聞く機会があり、成長が見込まれるスタートアップ企業であることを知りました。この時、「この先もフュージョンエネルギー業界で挑戦し続け、しかも次の世代に技術の継承ができるかもしれない!」と胸が熱くなったことは今でも鮮明に覚えています。すぐさまKFに応募し、面接ではこの想いを猛アピール。最終的にKFから採用通知を貰えた時は本当に心から嬉しかったです。

現在KFではどのような役割を担っていますか?
プラズマ加熱に使われるジャイロトロンシステムの技術チームの一員として日々業務に取り組んでいます。日本のものづくり技術の結晶であるこのシステムを研究開発の段階から産業転用し、「誰からも愛される物」として届けられるよう、製品の品質管理を念頭に働いています。1点のエラーも見逃さないように、常に様々な角度から物事を見るようにしています。

また、マネージャーとしてプロジェクトやチームのマネジメントにも関わっています。ジャイロトロンシステムの製造には多くのサプライヤが関わっているため、仕入先とも協力関係を構築し、維持管理することが不可欠です。そのため、品質や費用の管理に加え、関係各所と円滑に連携できるよう、しっかりとプロジェクトマネジメントしながら、進捗状況をチーム全体で共有できるよう取り組んでいます。

さらに、ジャイロトロンチームには数十年間フュージョンエネルギーに携わってきた巧者が多いため、個人の豊富な経験をチームの力へと還元できるように努めています。チーム全体の底上げには必要不可欠なことではありますが、一人1人の知識量が膨大なこともあり、まとめるのはやはり一苦労ですね。ただ、チームのマネジメントについては、学生の頃にバレーボール部のコーチ兼監督代行でチームを引っ張っていた経験が生きているのでしょう。

吉田さんのお仕事の流儀を教えてください
まず、自分の仕事に「誇り」を持つことです。
フュージョンエネルギー関連の技術はどれをとっても必要不可欠です。1つでも欠ければプラズマは生成できず、超伝導を維持できませんし、電子ビームも飛びません。そして私たちが作る製品は一品一様です。途中で投げ出したり妥協したりせずに、作り上げた製品は世界で唯一無二にもなりうるものだ、と胸を張ってものづくりに励んでいきたいです。

次に、組織で働く上では「透明性」が重要だと思っています。
例えば誰かが仕事でミスをしたときは、どんなに小さなミスでもチームで共有することが望ましいと考えています。当人を気遣って個別で対応したくなることもあるかもしれませんが、ブラックボックスになってしまうことは会社としての大きな損失につながると危惧しています。チームで共有し、話し合い、考えることが、真の解決につながる一番の近道だと思うので、チームはもちろん、会社全体でこの関係性を築くことは将来的にKFの大きな財産になると信じています。

最後に「多様な意見に耳を傾ける」ことです。
組織として働く上では、時に斜に構えて物事を見なければならない場合もあります。結果、プロジェクトを進める際にチーム内で意見が対立することもありますが、そのプロセスを踏まえた決定は偏りのないものになると思います。これを全員が十分に理解していないと、些細な見逃しが、ある日突然大きな化け物になって、襲い掛かってくるかもしれません。同じ意見ばかりに耳を傾け、組織のバランスが取れていないわけですから、会社経営を揺るがす事態にもなりかねません。こうした理由から、反対意見や少数派の意見にもしっかりと耳を傾けることが重要だと考えています。

この3つは現在のKFにとってのキーワードではないでしょうか。KFは中途採用が主で、豊富な経験を持った人たちが次々に入社し、組織が拡大しています。チームプレーの重要性が高まっている今、クローズドではなく、オープンなコミュニケーションを取り、自分にとって都合のいい意見のみならず、自分と異なる意見を歓迎する。そして自分が、さらには会社が行っていることに対して誇りを持つことを、私は常に心に留めていますし、チームのメンバーにもこの価値観を率先して共有していきたいと考えています。


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