皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。
当社にはSafety & Regulation Teamというフュージョンエネルギー関連施設の安全評価やリスク分析に関わる専門チームがあります。
フュージョンエネルギーという新しい分野における安全の取り組みとは?
今回はチームに所属する井野と神馬に話を聞いてきましたので、ご紹介します!
– Safety & Regulation Teamはどのような役割のチームなんでしょうか?
井野:フュージョンエネルギーを実用化するためには、安全の視点が欠かせません。当社は、核融合関連技術を基にしたモノづくりおよび研究拠点における実証試験プラントの建設を始めています。
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このような目の前のプロジェクトだけでなく、将来のフュージョンエネルギープラントを意識し、安全の視点からモノゴトを考えて仕事をしています。プラントの安全性を向上させるためにはどうしたら良いのか、不具合や事故が起こる場合にはどんな対応が必要なのか、体系立てて整理し、当社のモノづくりにフィードバックしたり、もう少しハイレベルな視点でフュージョンエネルギー関連施設の安全要件を検討したりしています。また、フュージョンエネルギープラントが社会に受け入れてもらえるために、安全検討の取り組みをきちんと広報していくことも、重要な役割の一つとして捉えています。
神馬:私は設計と規制構築の二つの側面からフュージョンエネルギープラントの実現に貢献するチームだと考えています。当社はフュージョンエネルギーの実用化を目指すエンジニアリング企業なので、要素技術だけではなく統合されたプラントシステムとして、きちんと世の中に出せるものにしていかなければなりません。そのために必要なのが安全の観点です。設計、製造、ビジネス、コーポレートなど欠かせない役割が会社ごとにあると思いますが、当社ではSafety & Regulation Teamもその一つを担っています。
– 具体的にはどのようなことをしているのでしょうか?
神馬:実際にモノづくりをするにあたり、安全を担保するためにはどのような設備が必要なのかを考えながら、エンジニアリング遂行に関わっています。もちろん、現在進めているフュージョンエネルギーの発電試験プラント「UNITY-1」のエンジニアリングにもプロセス安全エンジニアとして深く関与しています。
井野:「UNITY-1」はフュージョンエネルギーの実現に向けて社会的に意義のあることであり、会社としての大きなプロジェクトということはもちろんそうなのですが、安全性の検討においても非常に重要なマイルストーンだと考えています。将来的にフュージョンエネルギープラントを設計する際には、「UNITY-1」をスケールアップした場合を想像しなければなりません。最近では、より具体的な設計情報に基づく「UNITY-1」の評価および設計への反映や、将来のフュージョンエネルギープラントを意識した安全性担保のアプローチ確立に軸足を移している状況です。
井野:リスク評価においては万が一のシナリオ(どんな不具合が起きそうか)をいくつも描き、それぞれに対して現在の設計が妥当かどうか、どのような対策が必要なのかを分析・判断しています。リスクを正しく理解し、どのように設計および運用に落としていくのかを考えています。
神馬:正しくシナリオを描いてリスクを把握するためには、プラントのプロセスや運転に対する深い理解に加えて、様々な状況を想像する力が必要です。他の産業で既に確立されているリスク評価のアプローチをヒントにして、フュージョンエネルギープラントの設計に落とし込んでいく業務を行っています。
井野:リスク評価の結果は設計に対してプロジェクト早期に反映する必要があります。後回しにしてしまうと、せっかく形になった設計をやり直す必要が出てくるからです。まだ要素技術が確立されていないフュージョンエネルギープラントに対し、リスク評価をしていくのは難しい面もありますが、あらゆるシナリオを描けるよう日頃から最新の研究成果や他社の取り組みに対してアンテナを張っています。
他にも、自社研究開発拠点の労働安全を守るために必要なヘルメットや服装などの装具や基本的なルールなどの整備にも関わっています。会社全体としてそこで働く人を守るために何をすべきかを考えていくのは当然のことですし、社員が安全に働ける場を作ることが、研究開発を前に進めることにもつながります。
神馬:あとは、エンジニアリングにおける安全の考え方を社内外に発信する活動も非常に重要です。例えばプロセス設計を担当するエンジニアが危険なシナリオを考慮して対策を設計初期から考慮するようになる、安全管理の手順書を作成するのみではなく、きちんとメンバーが理解して行動に反映してするなど、各人の中に安全に対する考え方が浸透するところまでやらなければなりません。これは内側への広報に近いですね。
また、当社の安全に対する取り組みを世の中にも発信することは、ステークホルダーとの信頼関係構築に寄与すると考えています。これは顧客、サプライヤーやパートナーなどの協力会社、一般の方々に対する外側への広報と同様です。事業に関わる安全にきちんと向き合っているかどうかは、当社が社会に受け入れられるための重要な指標だと考えています。
井野:最近では学会やイベントの場で講演する機会なども少しずついただけているので、核融合産業の構築に必要な安全上の課題(チャレンジ)を共有するように意識しています。安全性の構築は当社だけでできるものではなく、関係者の理解の上で進められるものです。フュージョンエネルギーの実現は地球規模の課題を解決できる究極の社会インフラになると考えていますが、講演等でもその点に興味を持ち共感を持っていただける方が増えてきた印象を受けています。
一方で、その社会インフラを作り上げていくまでには、当社内だけでなく、外に出て多くの方と対話することが重要だと考えています。講演等を通じて未熟な部分を多く感じる日々ですが、スタートアップ・民間企業の立場で声を上げていく意義もあると考えていますので、積極的に対外的なコミュニケーションをとることにしています。
神馬:Safety & Regulation Teamは、学会やイベント等での講演で積極的にコミュニケーションをとることを一つの業務の柱にしています。安全性の側面から京都フュージョニアリングと社会をつなぐ架け橋になれるように、エンジニアリングとしての業務に加えて、コミュニケーションを大切にしたいと思います。当社には広報部門もありますので、そことの連携も必須ですし、今後さらに強化していかなければならないですね。
– リスク評価でシナリオを描くのには経験値も必要かと思いますが、お二人はこれまで同様の取り組みをされていたのでしょうか?
井野:私は原子力発電所の安全評価や放射線リスク分析などに携わっていました。核分裂と核融合は原理的にも異なるので、万が一のリスクの際のシナリオも異なります。シナリオが異なれば、対策も異なってきます。そのため、核分裂の原子力での取り組みをそのまま同じように当てはめていくということにはならないですが、一方で原子力安全や放射線防護の取り組みは大いに参考になる部分があります。
*井野のこれまでのキャリアはBehind The Fusion Sceneにて紹介していますので、ぜひご覧ください。
神馬:私は石油化学産業のプラントエンジニアでした。大規模なプラントの設計や試運転に関わる仕事をしていたので、そこで取り入れていた手法や現場での経験などを今の仕事に活かしています。特に、設計と運転現場のように立場の異なる人が何を大事に考えているかを実体験として理解しているので、安全の観点で設計に関わる際にも、机上の空論を押し付けることはせず、どうすれば実現できるかという建設的な議論を進める上で、前職の経験が活きています。
– お二人が異なる経験を持っていることもチームの強みになりますね。普段はどのようにコミュニケーションされていますか?
井野:当社は海外に拠点を持ち、働き方も柔軟なのでオンラインの時も多いですが、神馬さんとは対面でホワイトボードを使いディスカッションする機会が多いですね。私たちはこれまでのキャリアは異なるものの、安全の視点で共通するところが多くあります。その軸を据えながら、モノづくりやプラント設計などに対する評価を行っています。
神馬:設計における安全を達成するという共通のゴールを持っているので、話し合うときも建設的に意見をまとめていくことができています。フュージョンエネルギーの安全管理はまだ明確な方針があるわけでなく、これから作っていくものなので、ある意味で柔軟な発想を持ちながら考える必要があります。バックグラウンドの異なるメンバーがそれぞれの意見を尊重しながら議論を交わす過程で、自分が気づかなかった視点にも触れられるのは刺激的です。
井野:会社全体の傾向もそうですが、Safety & Regulation Teamではメンバー同士がフラットであること、フラットに議論することを意識しています。これまでにフュージョンエネルギーを背景に持っていなかったり、異なる業界のキャリアをもっていたりと、そのようなメンバーでコミュニケーションをとることになります。無意識にこれまでの経験に引っ張られてモノゴトを考える時がありますが、その度に、お互いの知見や考え方を尊重して議論する土台ができていると思います。
– すでに取り組んでいる「UNITY-1」だけでなく、今後ますますSafety & Regulation Teamの関わる機会が多くなりそうですね。
井野:フュージョンエネルギー特有の安全の考え方はここからより具体的になってくるのではないかと思います。内閣府が掲げる「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」でも、フュージョンエネルギー固有の安全とはなにかということや、安全規制の議論を進めることが提言されています。当社内だけに限るのではなく、国レベル、それこそ世界レベルでしっかりと見極めていく必要が出てくると思います。
神馬:そういった意味でも「UNITY-1」は一つのベンチマークになってくると考えています。そこでの安全評価や対策を振り返りながら、また次の機会にそれらを落とし込んでいく。そうやって経験値を積み上げていくことで、エンジニアリングにおける安全の品質を高めていくことになります。
また、今年9月に発表した「UNITY-2」に関しては、実際のフュージョンエネルギープラントにより近い設備構成になるので、プロジェクトパートナーであるカナダ原子力研究所(CNL)からの学びも活かしつつ、社内に還元していきたいですね。
井野:これらを実現するためには、現場のメンバーはもちろん、設計者や研究者、様々な人たちとコミュニケーションを取る必要があります。そのためにも、Safety & Regulation Teamは「聞く力」を最大限活かし、よりよい方向に導いていける存在でありたいと思っています。
当社のSafety Engineeringに関してはコチラもご覧ください。
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安全という当たり前に求められることを追求し続けるSafety & Regulation Team。その活動は一見派手なものではないものかもしれませんが、フュージョンエネルギーの社会実装に向けてとても重要な役割を果たしています。
フュージョンエネルギーが社会のインフラとして安心して受け入れられるよう、このブログでも安全に関する情報をお届けしていきたいと思います。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう!
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