新たなプロジェクト「UNITY-2」を通じて共同開発を推進し、商業機会も開拓
京都フュージョニアリング株式会社は、カナダ原子力研究所(Canadian Nuclear Laboratories、以下「CNL」)と戦略的業務提携契約(Strategic Alliance Agreement)を締結しました。本契約により、両者はフュージョンエネルギー実現に必要不可欠な燃料サイクルシステム(Fuel Cycle System)に関する共同新プロジェクト「UNITY-2」の開発を行うとともに、その研究成果や開発成果をフュージョンエネルギー研究機関やスタートアップ企業に提供するための商業機会の開拓にも共同で取り組んでまいります。
【契約の背景】
核融合炉内への安定かつ安全な燃料供給を行うことを可能にする燃料サイクルシステムは、フュージョンエネルギーの実現、そしてそれに取り組む全ての研究機関・企業にとって必要不可欠な機能です。特に世界の核融合炉の大多数はDT反応(二重水素とトリチウムによる核融合反応)による核融合を前提に設計されており、それらにおける燃料サイクルシステムは、水素同位体ガスを核融合炉心から排気・分離・循環させる技術によって構成されます。
この分野において、当社は以前より世界有数の技術ノウハウを有していましたが、その実証を実際の核融合炉における特殊環境に近い状況でさらに推し進めるべく、今年3月29日にCNLと共同開発契約に向けた覚書を締結しました※1。CNLは世界でも有数のトリチウムの取り扱いや管理に関する豊富な経験と技術、そして関連設備を有しており、覚書締結以降、両者は技術情報の交換や、技術や設備の共有使用、共同開発プロジェクトの検討を進めてまいりました。今回、それらの検討を経てさらに協業を深めます。
【両者の今後の取り組みのポイント】
- 「UNITY-2」を通じたトリチウム燃料サイクル技術とシステムの技術成熟度の向上
- フュージョンパイロットプラント設計と開発に向けたフュージョンプレーヤーへの支援提供
- トリチウムの取り扱いと活用に関する支援提供
このたびの戦略的業務提携契約を経て、両者はCNLの敷地内に設置した技術実証試験施設において実施する共同開発を「UNITY-2」と名づけ、設備・人員ともに強固な体制のもと開発を推し進めてまいります。さらに「UNITY-2」の成果を、世界のフュージョンエネルギーに携わる研究機関や企業に提供する商業機会を両者で積極的に開拓していくことでも合意しました。
当社にとって「UNITY-2」は、昨年7月に発表した「UNITY(以降、UNITY-1)」※2と双璧を成す重要プロジェクトです。「UNITY-2」が燃料サイクルシステムの実証に取り組む一方、「UNITY-1」は核融合炉から熱を取り出す熱サイクルシステムの開発・実証に集中することで、最適なリソース配分のもと、社を挙げて当社の強みである核融合炉周辺の工学技術の成熟度向上を目指します。
とりわけ最近では米国のエネルギー庁がフュージョンエネルギー開発の支援対象企業を発表※3し、対象企業に対して5~10年以内のパイロットプラントの設計・提出を求めるなど、核融合炉のみならずプラント全体の設計、中でも燃料サイクルシステムの全体設計への組み込みが急務となっています。このような需要の高まりに対し、両者の技術力を結集させて業界をリードする当分野のプロフェッショナルとして応えていくことを目指します。
本契約について、CNLの副社長であるジェフ・グリフィン博士は「CNLとKFはともに、フュージョンエネルギー業界内でも特殊な分野において類まれな技術優位性を築きながら、最先端の取り組みを行っています。協業を深めることで、両者の専門知識を効果的に活用し、市場の需要により良く、素早く応えることができます」とコメントしています。
また、KFの共同創業者でChief Fusioneerを務める小西哲之は、以下のようにコメントしています。
「フュージョンエネルギーは、世界がエネルギー課題を抱える現状に革新的な変化をもたらす可能性を持っています。CNLとのパートナーシップにより、KFが持つ技術とCNLの専門知識を結集し、フュージョンエネルギーの商用化に向けて最も重要な課題解決に取り組むことができます」
今後も当社とCNLは、究極的なエネルギーソリューションであるフュージョンエネルギーの実現を目指すべく取り組んでまいります。
※1:京都フュージョニアリング、カナダ原子力研究所(CNL)とフュージョンエネルギーの実現に向けて協力
https://kyotofusioneering.com/news/2023/03/30/1334
※2:京都フュージョニアリング、世界初の核融合発電試験プラント建設
https://kyotofusioneering.com/news/2022/07/06/767
※3:アメリカエネルギー庁の発表
https://www.energy.gov/articles/doe-announces-46-million-commercial-fusion-energy-development
【CNLについて】
CNLは、カナダにおける原子力研究の中核を担う、世界でも有数の原子力関連技術の研究機関です。前身となるカナダ原子力公社(AECL)から2014年に設備の運営・管理を引き継ぎ、原子力の平和利用および医療への応用について、日々最先端の研究が行われています。カナダの CANDU® 原子炉技術に基づくトリチウムの安全管理に高い技術と長い安全の歴史を持っており、チョークリバー研究所で最先端の専用研究施設を運営しています。
【京都フュージョニアリング株式会社について】
当社は、京都大学の長年にわたる核融合研究の成果に基づき2019年に設立された、核融合特殊プラント機器の開発に特色を持つエンジニアリング企業です。
プラズマ加熱装置、熱取り出しブランケット、高性能熱交換器、水素同位体移送ポンプを始めとした先端核融合工学分野において世界有数の技術力を有しており、英国原子力公社を始め全世界の核融合研究開発機関・企業を顧客に持ちます。
日本のものづくり力を結集し、革新的なエンジニアリングソリューションを世界に提供することで、人類に究極のクリーンエネルギーを提供し、フュージョンエネルギーという新たな世界市場を創出することを目指しています。
<会社概要>
会社名 京都フュージョニアリング株式会社
設立 2019年10月
事業内容 核融合プラント関連装置・システムの研究開発およびプラントエンジニアリング
代表者 代表取締役 長尾 昂(ながお たか)
社員数 96名 (2023年7月1日時点、派遣・業務委託・海外子会社含む)
所在地 東京都千代田区大手町(本社)
・京都府宇治市五ケ庄(研究拠点・京都大学宇治キャンパス内)
・英国バークシャー州レディング(英国子会社オフィス)
・米国ワシントン州シアトル(米国子会社オフィス)
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