2023.03.29
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: 井野 孝

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井野 孝 Technical Development Department Plant Technology Division Manager
2021年8月より京都フュージョニアリング参画。原子力発電所の安全評価、事故時における被ばく影響評価を担当。その後、福島第一原子力発電所における放射線リスク分析業務に従事。

安全・リスクに興味を持ったきっかけは?
大学では確率論的リスク評価を研究テーマとして、化学プラントをモデル化し、事故が起こる確率の分析や評価手法自体の研究を行いました。プラントシステムの安全性や信頼性を数字で俯瞰して分析できることが魅力的でした。

卒業後は、複数のコンポーネントが組み込まれたプラントの安全性を高めるような仕事をしたいと考えて、原子力発電に関わる仕事を選びました。

特に印象に残っているご経験はありますか?
入社して1年も経たないタイミングで、東日本大震災を経験しました。私にとって何より衝撃的な経験となり、当時は原子力発電所の現場で働きながらも、原子力に対してずっと複雑な気持ちを抱えていました。

そんな中で、入社4年目のタイミングに、大学で原子力工学を勉強する機会をもらったことが、純粋な目で原子力発電所の事故や原子力工学に向き合うきっかけとなりました。実業務に復帰した後は、原子力発電所の安全評価や福島第一原子力発電所のリスク分析に関わりました。安全やリスクに関わる同僚や上司には優秀な方が多く、一緒に働けたことは貴重な時間でしたし、今のキャリアにも繋がる原体験になっています。

原子力安全に関連した業務では、環境や人への放射線影響が生じるシナリオを分析し、その発生頻度や放射線影響について評価することで、発電所の安全性向上やステークホルダーとの対話に活用していきます。仮に、放射線リスクが定められた規制基準を満たしたとしても、社会に許容され運用していくためには、そのリスクに継続的に向き合い、適切な情報発信をすることでステークホルダーとの信頼関係を築いていくことが不可欠になります。

また、エネルギーインフラの分野は、一個人や一会社のために存在するのではなく、ステークホルダーの合意のもとに成り立ちます。そのため、立場の違いによる様々な視点や課題があり、それぞれの物事を同時に前に進めていく難しさがあります。私自身、安全やリスクの分野から、現場で働かれている方や、社外の多くのステークホルダーの方々と対話をする機会をいただき、これは大きな財産になっていると思います。

京都フュージョニアリング(KF)に入社したきっかけは?
転職を検討し始めたのは、担当者の一人として携わっていた発電所の設置変更許可の案件に一区切りが見えてきた時です。業務の節目もありましたが、「今後何をやりたいのか」について、一度、今までのキャリアや専門性を忘れてゼロベースで考えました。

もともと興味の対象が広いタイプだったこともあり、転職活動では様々な業界を検討していましたが、活動を通じて、世の中には、技術をベースに社会を変えたり、個人の概念を変えたりすることができる企業がたくさんあることを知りました。例えば、電動キックボードを扱う企業では、街や移動の概念を変える可能性を感じましたし、遺伝子検査を扱う企業を知った時には、それによって個人の思考やキャリアがどのように変わるのかに思いを馳せることができ、知らなかった世界を知るだけで楽しくなりました。

そうして、様々な企業に出会う中で、自分が大事にしたいスタンスは、「自ら携わる技術によって人々の生活を支え、社会がよりよく変化していくことを実感したい」という想いだと気がついたんです。

その中でも、KFはひときわ印象的で、核融合は社会を変える大きな技術革新であり、人類が取り組まなければいけない分野だと感じました。実際、入社前にCEOの長尾さん、CTOの小西さん、執行役員の世古さんと話した後には、核融合の世界に早く飛び込みたいと思うようになりました。「やるべき分野」であると同時に、「やりたい分野」だと思うことができ、核融合市場の動向を踏まえても今しかないと思いました。

とりわけ、初めて小西さんと話した時に、「核融合プラントの設置許可申請書を書いて」と言われたことは、今でも私のこの会社における課題として心に残っています。ゼロからやりたいことを模索していた中で、自分のこれまでのキャリアが核融合という新たな世界と不意に繋がり、ここで働くという選択肢が自分の中で腑に落ちたような瞬間でした。

現在、KFではどのようなプロジェクトに取り組んでいますか?
中心的に関わっているのは、核融合プラントの安全評価に関わるプロジェクトと、核融合の熱利用に関するプロジェクトの二つです。

安全評価のプロジェクトでは、今後の核融合プラントの実現を想定して、プラント全体での放射線リスクを分析し、必要となる安全機能の分析やライセンシングにつながる検討を行っています。また、学会や原型炉設計合同特別チームに参加するなど、安全規制構築に関わる検討も行っています。技術的な妥当性を確保することはもちろん、社会と共存するインフラとして、ステークホルダーとの対話を大切にしていきたいと考えています。

特に、核融合領域の安全規制は国際的にもスタンダードな基準がまだ定められていない段階なので、国内だけではなく、海外のスタートアップと連携したり、国際的な考え方を取り入れたりしながら、ライセンシングのあり方を検討したいと考えています。今年の3月に行われた学会では、欧州で検討されてきた核融合プラントの安全評価を、一般的な放射線許容の基準と比較したリスク分析について発表しました。今後の検討の足がかりにできればと考えていますし、既にその先の目標を持ってチームで動いているところです。

一方、核融合の熱利用については、高温の熱を利用したバイオマスの炭素固定化や水素生成に関わるプロジェクトを進めています。今年度は、京都府や向日市と連携しバイオマスを活かしたカーボンネガティブにつながる技術検証を行いました。「自ら携わる技術で人々の生活を支えたい」と願っていた私にとって、こうした社会や地域と直接的に協力できる取り組みの機会をいただけていることは本当にありがたいと感じています。

安全の分野も熱エネルギー利用の分野も、社会との接点に関わるところになるので、今後も社会との繋がりを意識して、社会をよりよく変えていけるように技術検討を進めていきたいと思います。

これまでのKFでの仕事を経て感じたことは?
改めて、核融合の市場自体が大きな可能性を持っていることに加えて、KFのビジネスモデルが産業創出や核融合プラントの実現に向けて鍵となる役割を担えるものだと信じています。

実際、経営メンバー、ビジネスチーム、コーポレートチームはKFのビジョンを実現するために必要な機会を創出し、会社を支え、エンジニアが技術検討にフォーカスできる環境を作ってくれています。我々エンジニアがしっかりと技術実証を重ねてくことで、核融合プラントの実現に貢献しなければという使命感、責任感のようなものを日々感じています。

一方で、やりたいことが既に山積みになっていることに加えて、そこに絶えず、やりたいこと・やるべきことが降り注いてきているような感覚があり、どうやって戦略的に前に進めていくのかいつも悩んでいます。入社してからずっとカオスです(笑)そんな中で、現段階で「何かをやり遂げられた」という実感があるわけではありませんが、今やっていることが核融合の実現につながるという感覚もあります。

また、これもスタートアップならではかもしれませんが、自分が入社した1年半前からKFは信じられないくらい進化していて、直近での半年、3ヶ月を振り返っても、その変化は著しいです。従業員もどんどん増えてきて、一人として同じ役割、業務を担っている人がいないので、私は誰一人欠けても、今と同じことはできないと思っています。核融合の実現は一人の力では絶対に成し得ないし、今いる一人ひとりがキーパーソンだと信じています。だからこそ、プロジェクトで直接関わりのあるメンバーはもちろん、それを支えてくれいるほかのメンバーとも連携しながら、KFみんなで核融合の実現を実感できるようにしていきたいです。

井野さん自身はKFでどのようなことを達成したいですか?
核融合プラントを作るというシンプルで大きな目標があります。

私は実施している安全の側面は、それ単体だとビジネスになりにくい概念ですが、プラントを構築していく上で欠かせないものです。また、社会からの信頼を得る上で非常に重要な役割を担うものだと考えています。

「何のためにプラントを建設するのか」「その上でどんなリスクがあり、どうやって安全を確保していくのか」

核融合の社会実装に向けて、ステークホルダーとの対話を大切しながら、尽力していきます。

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