2024.11.29
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: Italo Godoy-Morison 

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In a nutshell: 
2023年11月にインターンとしてKyoto Fusioneering UK (KFUK)に入社し、当社のブランケットの研究開発に携わったItaloさん。約10ヶ月間、インターンとして経験を積んだ後、2024年10月から日本拠点の正社員になり、当社の研究開発拠点「京都リサーチセンター」で建設が進むUNITY-1の技術開発にも取り組んでいます。


フュージョンエネルギーに興味を持ったきっかけを教えてください。

フュージョンエネルギーに魅了されたのは、私が17歳の時でした。

幼い頃から周りの物事の仕組みに対して強い好奇心を持っていたので、時には何かを分解して中を見たくなり、そのせいで怪我をすることもありました。それでも「どうしてこうなるのだろう?」という気持ちを抑えることはできなかったんです。

そして高校生のころ、物理の授業で「アイアンマン」に出てくるアーク・リアクターが取り上げられたのを今でも鮮明に覚えています。その仕組みがフュージョンエネルギーに基づいていると先生から教わった瞬間、強い衝撃を受けました。

すぐにフュージョンエネルギーについて調べ始めたところ、私が子どもの頃から夢中になってきた「工学」と「物理学」の両方と関連した分野であることを知りました。フュージョンエネルギーに強い好奇心が芽生えたのはそのときです。

高校卒業後、私はニュージーランドのオークランド大学に進学しました。大学にはフュージョンエネルギー専攻の学部はありませんでしたが、関連する分野を学びたいと思い、機械工学と物理学の学位を専攻しました。

しかし、大学で学びを深めるうちに、フュージョンエネルギーへの関心は日増しに強くなり、さらなる知識を求めたいという欲求も高まりました。

その思いもあり、大学を卒業する前にニュージーランドのBuckley Systems Ltd.という会社でインターンシップを行いました。この企業は加速器向けの高精度電磁石を製造していて、私が学んできた機械工学や物理学を応用できる場だと思い、インターンシップ先として選びました。実際ここでは数トンにもなる巨大な電磁石の冷却や設計に関わる作業を経験し、非常に実りのある日々を送りました。

しかし、Buckleyでインターンシップをしたことで、より一層「フュージョンエネルギーを学びたい」という思いが強くなりました。

ただ、ニュージーランドにフュージョンエネルギーを専門的に研究する機関が当時はなかったので、この分野に本格的に携わるためには母国を離れる必要があると気づいたのです。

最初は正直、家族や友人から離れる不安や異国の地に行くことの迷いはありましたが、それ以上に、フュージョンエネルギーを学びたいという気持ちが私を突き動かしました。そして最終的に、フュージョンエネルギーを専門的に学ぶため、イギリスのヨーク大学の修士課程に進学することを決めました。

どのように母国を離れる不安や迷いを乗り越えたのですか?

もともと私の母がブラジル出身で、私自身も幼少期をブラジルで過ごした経験があったので、異文化に触れることには多少慣れていました。

でも何より1番大きな理由は、フュージョンエネルギーを学ぶ機会をここで逃したら、一生後悔すると思ったことです。「いましかない!」と感じ、思い切ってイギリスに行くことを決意しました。

志望していたヨーク大学に進学し、目標であったフュージョンエネルギーを専門的に学ぶことは達成できたものの、その複雑さに圧倒されました。

プラズマ物理から装置内の無数のサブシステムに至るまで、細かさと求められる精密さが想像以上だったんです。

しかし、世界中でこうした挑戦を乗り越えながら解決策を見つけ、フュージョンエネルギーを実現しようとしていることを想像すると、胸が熱くなりました。

京都フュージョニアリング(KF)を知ったきっかけを教えて下さい。

修士論文を執筆している頃、自分の将来について真剣に考えるようになりました。「やはりフュージョンエネルギーに携わりたい」という強い思いを抱きながら、主にLinkedInを活用して就職先の情報収集を進めていました。

そんなとき、京都フュージョニアリング(KF)の共同創設者であり、UKディレクターを務めるRichard Pearsonの存在を知りました。彼の投稿を読んで、日本初の核融合スタートアップがイギリスに子会社を設立していると知りました。

いてもたってもいられず、思い切ってRichardに直接メッセージを送ったところ、Richardと私のいまの上司であるLuigi Candideと面接をすることになりました。

面接では学んできた機械工学や物理学の知識や、学生時代から私の原動力となっていたフュージョンエネルギーへの情熱を伝えました。 その結果、2023年11月末に私はKFUKのインターンとして迎え入れてもらうことが決まりました。このチャンスを得られたときの喜びは、今でも忘れることができません。

Kyoto Fusioneering UK (KFUK)での業務内容を教えて下さい。

KFUKでインターンとして働いていたころ、私は主にブランケット「SCYLLA©(The Self-Cooled Yuryo Lithium Lead Advanced)」の設計・開発に携わっていました。

ブランケットはプラズマや核融合反応によって発生するエネルギーなどに直接接触し、1億度以上の高温にさらされます。これに耐えられるように先端材料(SiCコンポジットなど)を用いたブランケットの開発を進めていますが、その扱いは難度が高く、非常に挑戦的なプロジェクトです。

その中で私は、核融合反応から取り出すエネルギーを最適化するため、シミュレーションを重ね、設計における改善点を見つけることに注力しています。見つけた課題を克服するべく、どのような技術開発が必要なのかをチームのメンバーと議論・検討を重ねています。

SCYLLA©の設計は標準化されていない部分が多いため、単に既存の知識に頼るだけでは不十分です。創造力を駆使しながら、実現可能性や安全性、効率といった多様な視点を取り入れた提案が求められる、非常にやりがいのある仕事でした。

何か課題に直面しても突破口が見えず、苦しいときもありました。しかし、チームで議論を重ねる中で、自分一人では気づけなかった新しい視点や解決策を得ることができ、次第に前進している手応えを感じることができました。こうしたやり取りを経て、KFUKのチーム力の高さを実感しました。

RichardやLuigiのような経験豊富なメンバーに気軽に質問ができたり、自分のタスクについてアドバイスをもらったりする機会があったおかげで、インターンシップ中に、フュージョンエネルギー分野における実践的な経験を積むことができたと思っています。

そして、インターンシップが終わりに近づいた頃、Vice President of Plant TechのColin Bausから、正社員としてKFに残らないかというオファーをいただきました。

ただ、そのオファーがKFUKのメンバーではなく、日本のチームの一員としてという提案でした。

日本の社員になると聞いたとき、どのような心境でしたか?

予想外の展開に驚きました。でもその一方で、新たな挑戦への期待感も湧き上がりました。

その話を聞いたとき「また地球の反対側に行くのか」と少しためらったのも事実です。ただ、ニュージーランドからイギリスへ移ったときの決断―フュージョンエネルギーへの情熱を追い求めるために、自分の心に従ったあの決断ーが間違いではなかったことーを思い出し、「今回も目標のために飛び込むべきだ」と思ったんです。

日本のフュージョンエネルギー分野で働けることは大きな魅力でしたし、ニュージーランドから見れば地理的にはイギリスよりも故郷に近づくという点も、心を後押しする要素の一つでした。

もちろん、新しい国で働くことには不安もありました。これまで滞在してきた国々とは異なる文化に適応しなければならないという課題です。でも幸運なことに、日本の文化に詳しいメンバーが手助けしてくれたおかげで、その不安も少しずつ解消されました。

そして、特に印象深かったのは、私が日本に来て間もないころに開催された「Culture Day」という全社的なイベントです。

このイベントは拠点ごとに会社のカルチャーについて語り合うものでした。普段ミーティングで顔を合わせない日本のメンバーとも対面でディスカッションできたのは、関係を深める上でとても貴重な機会でした。

日本で働き始めるうえでの不安を軽減するだけでなく、新しい環境で頑張ろうという気持ちを強くしてくれ、これから日本で生活する段階において、大きな心の支えになりました。

日本で正社員となってからは、どのようなことを担当していますか?

現在、私はKFUKで取り組んでいたSCYLLA©の研究開発を引き続き担当しながら、京都リサーチセンターで建設中の「UNITY-1」プロジェクトにも貢献しています。UNITY-1では特に、ブランケットモジュールを使用した熱の取り出しに関する分析が私の主な担当業務です。UNITY-1はフュージョンエネルギーを実用化するための重要な発電実証プラントであり、その一端を担えることにやりがいを感じています。

KFUKのメンバーとも引き続き密接に連携しているため、時差を考慮する必要がありますが、私はこれをポジティブに捉えています。

日本時間で私が業務を進め、私が終業する頃にイギリスのメンバーが始業する。まるで「バトンを引き継ぐ」ように作業を続ける。この連携は非常に効果的で、プロジェクトの進行を円滑にしていると実感しています。

例えば、私がイギリスにいた頃、当社はSOFT 2024(第33回核融合技術シンポジウム)に参加しました。学会でSCYLLA©の研究開発の進捗を発表するため、日本とイギリスのメンバーが時差を活用してポスターや発表内容の準備を進めました。

時差を味方にすることで、24時間体制でプロジェクトに取り組めるような感覚があり、非常に効率的だったと思います。

こうした国をまたぐ連携作業は、私にとって大きな学びと成長の機会になっています。それぞれのメンバーの専門性を活かし、時差を超えて協力し合えることは、グローバルカンパニーのKFならではの魅力だと感じています。

  

最後に、KFで実現したいことについて教えて下さい。

SCYLLA©やUNITY-1といったプロジェクトを通じて、メンバーから知識や経験を貪欲に吸収し、自分のスキルをさらに高めていきたいと考えています。

KFには、多くの経験豊富で情熱を持ったメンバーがいます。その一員として働けること自体が大きな学びの場であり、私自身の成長にとって欠かせない機会だと思っています。

仲間たちと共に、私が高校生の頃から追いかけてきたフュージョンエネルギーの実現に向けて挑戦を続けたいです。フュージョンエネルギーは、クリーンで持続可能な未来をつくる鍵になると信じています。その実現に貢献することが、私の人生の大きな目標です。

KFでの日々は、まさにその目標に向かって進んでいる実感を得られる場です。これからもチームと協力しながら、技術の進歩と可能性を探求し、フュージョンエネルギーが世界のエネルギー問題の解決に貢献する瞬間を迎えられるよう、全力を尽くしていきたいと思います。

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