
In a nutshell:
2023年4月に京都フュージョニアリングへ入社した村木さん。ビジネス部門に所属し、前職の大手建設機械メーカーで培った海外ビジネスの推進や調達業務、新規事業立ち上げ経験を活かして、現在は当社のジャイロトロンシステムを海外に展開するプロジェクトのマネジメントを担っています。
村木さんは現在当社でプロジェクトマネージャーを担当されていますが、これまでのキャリアを教えてください
大手建設機械メーカーに新卒で入社して数年間、法務部で契約審査や法律相談業務に従事しました。その後、エンジン製造工場に赴任して、自社製造に用いる基幹コンポーネントのバイヤー業務を7年ほど経験しました。その際、米国サプライヤーの窓口となり、原価低減プロジェクト等に従事しながら海外ビジネスの面白さ、醍醐味を知るとともに設計や生産管理、品質保証といった製造業の基本工程や仕組みを現場で学びました。
工場での業務を一通り経験した頃、建設業界のDX推進を通じて土木現場の労働生産性を高めることを目的とした新会社(ジョイントベンチャー)立ち上げの話が持ち上がり、社内公募制度を利用して応募することにしました。新会社には当時13名しかメンバーがおらず、尊敬できる上司の元、大企業とは異なるスピード感溢れるスタートアップ環境で経験を積むことができました。当時、従来の建設機械に後付けのIoTデバイスを取り付けることでICT建機同等の機能を安価に搭載できるサービスを展開していたのですが、サプライチェーンマネジメントからビジネススキームの構築、販売後のアフターサービスまで文字通り「何でも屋」として新規事業立ち上げ、推進に携わりました。

その会社で働き続ける選択肢もあった中で、京都フュージョニアリング(KF)に転職しようと思ったきっかけはなんですか?
出向には期限があり、いずれ出向元の大企業に戻ることが既定路線でしたが、新会社で異なる企業文化に触れたことで、一度外の世界に飛び出し、より成長できる環境で勝負したいという気持ちが芽生えました。
その頃、偶然KFの採用情報を見つけました。当時、フュージョンエネルギーについては全くの門外漢でしたが、そのスケールと社会的なインパクトの大きさに驚かされました。また、スタートアップの多くがソフトウェアを軸とするテック系企業でしたが、KFは骨太のハードウェアビジネスで勝負している点にも魅力を感じました。
初めての転職で不安もありましたが、地に足のついたビジネスモデルが緻密に作りこまれていた点、何よりワクワク感を重視して応募を決めました。
KFに入社してから、村木さんはどのようなことを担当されていますか?
KFの主力製品であるプラズマ加熱システム「ジャイロトロンシステム」を、英国のスタートアップ企業「Tokamak Energy」社に供給するプロジェクトのプロジェクトマネージャー(PM)を主に担当しています。具体的にはプロジェクト全体の進捗およびタスク管理、課題解決に向けた取りまとめ、各種契約交渉等を顧客との窓口となってリードしています。
プロジェクト推進においては、「顧客が何を求めているのか」を常に意識しています。特に海外の企業を相手とするビジネスでは、商習慣や準拠基準含めてこちらと顧客側の認識が異なることがよくあるため、先方のPMと密にコミュニケーションを図り、手戻りのない効率的なプロジェクト運営を心掛けています。
一方、100%顧客の要望を受け入れることが難しいケースもあるので、社内エンジニアやサプライヤーのリソース状況を勘案し、各ステークホルダーの「調整役」としてバランスのよい着地点を提示することも大事な役割です。
また、KFは技術力が基盤の会社なので純粋なエンジニアリング業務以外はなるべくビジネス部門で巻き取り、エンジニアが気持ちよく働ける環境作りにも気を配るようにしています。
プロジェクトを進めるうえで感じる大変な側面・やりがいを教えてください。
前職では専門部署が設計レビューや技術文書管理を担っていましたが、KFではまだまだ人員も限られることから、こうした領域にもビジネス部門のメンバーが一歩踏み込んで管理していく必要があります。
入社当初、製品知識のない中でこの領域をカバーするのは大変でした。
また、プロジェクト固有のアプローチを要請される場面も多々あり、輸出手続き含めて手探り状態の中でプロジェクト運営しなければならない点は苦労しました。
一方、プロジェクトメンバーは多様なバックグラウンドを持った幅広い世代で構成されており、各分野のプロフェッショナルが揃っています。こうした優秀なメンバーに囲まれながら仕事ができる点は大きな魅力だと感じています。
今年の2月には実際にTokamak Energy社を訪問し、当社が納入した製品が順次据え付けされていく光景を目の当たりにする機会がありました。プロジェクトの進捗を肌で実感するとともに、顧客側のプロジェクトメンバーからこれまでの貢献に対する感謝の念を直に伝えられた際は、大きな達成感とやりがいを覚えました。
プロジェクトを進める上で、前職での経験はどのように活かされていますか?
プロジェクトの完遂には図面、仕様書など多くの文書が必要ですが大手製造業での業務経験を活かし、あるべき姿、ゴールイメージを持ちながら業務プロセスの整理、提出文書のアウトプットをリードできる点は大きいと思います。また、前職の出向先のジョイントベンチャーで0→1ビジネスの耐性がついていた点も、KFでの業務に活かされていると感じます。
プロジェクトを進める中で何より大事だと感じるのは「いかに相手の懐に飛び込み、信頼関係を構築できるか」という点です。月並みな表現かもしれませんが、業界や商材が変わろうともこの点は不変だと感じます。プロジェクト発足当初はなかなか思い通りに物事が進まない時期もありましたが、「村木のためなら協力しよう」という信頼関係を先方担当者と築けたことで少しずつプロジェクトが軌道に乗り始めました。

最後に、村木さんが達成したい目標などがあれば教えてください。
まずはTokamak Energy社向けプロジェクトをスケジュール通りに完遂することを最優先に取り組んでいきたいです。プロジェクトの実績を作ることで、当社のジャイロトロンの信頼性をより高めて、次の案件獲得につなげていきたいです。そして、ここで得られたプロジェクト運営のノウハウも、後続プロジェクトに横展開していきたいと考えています。
フュージョンエネルギーは日本が強みを持つ技術で将来世界をリードできる数少ない分野だと思います。最近では、さまざまな人と話す中で、フュージョンエネルギーへの関心や期待が確実に高まっているのを感じています。未来のエネルギーを形にするーーそんな壮大な挑戦の一端を担えることに誇りを胸に、フュージョンエネルギーに関わる日本企業を巻き込みながら、その産業化を起点に、世界における日本の存在感を高めていきたいです。