2024.07.31
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: 矢ケ崎 誇楠 

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In a nutshell:
2022年3月にインターンとして京都フュージョニアリング(KF)に参画した矢ケ崎さんは、約1年間ジャイロトロンシステムの設計に関する経験を積んだのち、大学院修了を経て2023年4月に正社員となりました。現在はベテランメンバーの知識やノウハウを吸収しながら、研究開発から国内外におけるジャイロトロンシステムの性能試験まで幅広くElectro Magnetic部門で活躍しています。 


なぜ京都フュージョニアリング(KF)に入社しようと思ったのですか? 
一言で言うと、「未来のエネルギーを自分の手で現実にできると思うとワクワクしたから」です。 

初めてフュージョンエネルギーについて知ったのは高校生の頃でした。当時は自分が文系なのか理系なのかもいまいちピンとこず、将来をあれこれ考えていました。そんな中、私の担任である物理科の先生が授業中の小話の中でフュージョンエネルギーの話をしました。家に帰って何の気なしに調べてみたところとても魅力的に映り、「大学でやるならこれだ!」と直感しました。 

大学ではエネルギー工学系の学科に在籍していたこともあり、刺激的な学びと体験の連続でした。より専門的に学びたいと思い、大学院ではプラズマ物理学を専攻し、フュージョンエネルギーによる発電には欠かせない非接触ダイバータプラズマの研究を中心に取り組みました。試験装置を自分の手で改良し、地道に試行錯誤を重ねることで少しずつ先へ進んでいくことに楽しさを見出していましたし、少し成果を挙げられたというのもあり、当時は「これからは研究者として生きていこう」と思っていました。 

しかし、大学・大学院での研究はコロナ禍の真っ只中でした。社会が不安定になる中、自分の気持ちにも色々変化が芽生え、研究者としての将来だけではなく、自分の専門分野を活かして就職する道も検討し始めました。日本でフュージョンエネルギーを仕事にする選択肢が多くはない中で、京都フュージョニアリング(KF)はずっと気になる存在でした。 

詳しく調べてみると、フュージョンエネルギーの産業化を目指すKFの事業やミッションに惹かれはじめました。新卒採用を実施しているとはどこにも書いてありませんでしたが、思い切ってお問い合わせフォームから連絡してみると、「ぜひ一度お話してみましょう」と、当時すでに在籍されていた社員の方々とカジュアルに話す機会をいただきました。何度かお話をするうちにインターンとしての採用面接の機会をいただきました。 

ご縁がつながり、2022年3月にインターンとしてKFに入社しました。研究室では電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用した直線型プラズマ装置を扱っていたこともあり、ジャイロトロンシステムの研究開発を行うElectro Magnetic(EM)部に配属されました。 

KFにとってもインターンの受け入れは私が初ということだったので、もちろん最初はプレッシャーや不安もありました。ですが、定期的に社員の方々と交流する機会があったおかげで、スムーズに新しい環境に慣れることができました。また、私の入社後まもなく、小林さんも同じチームにインターンとして入社されました。境遇が似ているメンバーがいてくれたことも、心強かったです。

インターンシップの間は、ジャイロトロンに欠かせない部品のひとつであるモード変換器の設計に携わっていました。インターンでありながら、ジャイロトロンを数十年間研究開発してきたメンバーから直接指導を受けることで、多くの学びを得ることができました。2023年の4月に正社員となってから現在に至るまでも、インターンとして1年間培った経験や他のメンバーとの関係性が自分を支える礎になっているのを実感します。 

behind-the fusion-scene-Konan-Yagasaki

現在はインターンの頃よりも、いっそう業務の幅が広がっていると思います。どのようなことに取り組まれていますか? 
ジャイロトロンシステムに使用される機器の研究開発を中心に行っています。特に準光学系に携わっており、インターンのころから関わってきたモード変換器のほか、ジャイロトロンやMOU(準光学整合器)に内蔵される、ビームを理想の形状に整えるミラー系の研究開発・設計を担当しています。

(機器の説明に関しては、こちらのブログもご覧ください。) 

また、実際に国内外の試験サイトに出向き、工場受入試験(FAT)や顧客サイト受入試験(SAT)を実施することもあります。理論設計だけでなく現場で試験を実施することでジャイロトロンへの理解が深まっていくのを実感しています。 

直近のプロジェクトでは、FATおよびSATの試験項目の選定・調整やスケジューリングも担当しています。どのように要求性能を達成するべきか考えるうえでジャイロトロンシステム全体を俯瞰する必要があり、システムに関わる知見を広く得るきっかけになっています。 

最近は複数のジャイロトロンシステムのプロジェクトが同時並行で進んでおり、チーム全体が非常に忙しくなっています。より一層効率よくプロジェクトを進めるためにも、注意深く取り組んでいます。

直近で印象に残っている業務を教えてください。 
今年の3月にイギリスに出張したときのことはよく覚えています。日本から英国原子力公社(UKAEA)へ送ったジャイロトロン本体や周辺機器を現地で受け取り、その後の確認作業を行いました。また、SATに備え、現地のエンジニアに機器の仕様や試験方法を説明しました。

(矢ケ崎が出演している、ジャイロトロンをUKAEAに出荷の様子を収めた動画はこちらよりご覧ください。) 

KFを代表してイギリスに行ったのでかなり緊張しましたが、その分、出張を無事に終えたときの達成感は大きかったです。特にUKAEAへ納品するジャイロトロンシステムは、28 GHzと35 GHzの比較的低い周波数を発振できる仕様が求められているのですが、現在主流となっているのは100 GHz以上の高周波数を発振するジャイロトロンシステムです。開発も試験も、私たちにとってすべてが大きな挑戦でしたが、日本の研究機関やメーカーの多くの関係者と協力して粘り強く進めてきた結果、SATのフェーズへと移行させることができました。イギリス現地に無事に到着したジャイロトロン本体を確認したときは、この先のSATのことを思い、気が引き締まりました。 

一方で、自分の無力さを痛感する瞬間もありました。機器について頭では理解していても、現地での想定外の状況を前に言葉に詰まる場面がありました。渡航前には入念に準備をし、出張中も日本にいるメンバーからのサポートのおかげで十分な任務は果たせたとは思います。ただ、「もっと知識があれば、臨機応変に対応できただろうな」と、まだまだ自分には成長の余地があると感じました。 

KFは成長できる環境だと思いますか。 
技術面でもソフトスキル面でも、成長できていると感じています。 

技術面では、CTOの坂本さんや上司の平田さんをはじめ、経験豊富なベテランのエンジニアや研究者と一緒に仕事を進めています。未経験の業務に挑戦する機会も多く「難しい」と感じることもありますが、他のメンバーに相談しやすい環境なので非常にありがたいです。 

ソフトスキル面でも、周囲には尊敬できるメンバーが多く、常に学んでいます。例えば、プロジェクトマネージャーを務めるビジネス部門の坂口さんは、エンジニアの視点を持ちながら的確にプロジェクト全体を統率されています。そのような姿を間近で見て、素直に「こういう人になりたい」と思いました。 

また、部門を超えてコミュニケーションを取る機会も多いというところも面白いです。多様な価値観・知識・経験に触れながら、スピード感のある環境で業務ができるのはKFの魅力的な特徴の1つだと思います。 

KFが気になっているという学生の方には、私が経験したインターンシップをおすすめしたいです。最先端の技術を経験豊富なメンバーから直接学ぶことができ、部分的ながらもKFの会社の雰囲気に触れることができるので、成長意欲の高い方には最適だと思います。 

ベテランの方々から若い世代への技術の継承は、KFが会社として大変重要視している課題の1つです。所属のEM部では、どのように取り組まれているのでしょうか。 
私自身だけでなく、チーム全体で成長する上での課題として、次の2つを認識しています。1つはベテランのメンバーの頭の中にある「暗黙知」や「経験」をいかにKFの共有財産として引き出すか、です。先輩方の計算プログラムやジャイロトロンの運転といった技術や、ジャイロトロンシステム設計に内在する勘や暗黙知をただ継承するのではなく、形式知化してチーム全体で共有し、属人化を防ぎながら誰でもアクセスできる仕組みの構築にも注力しています。 

もう1つは、フュージョンエネルギーの産業化を目指す上でどのように業務を効率化するかです。多くのプロジェクトが同時並行で進行している今、プロセスの洗練と標準化が喫緊の課題だと認識しています。例えばジャイロトロンシステムの試験項目やスケジュールの効率化を検討しています。 

KFも会社としてはまだ5年目ですので、ルール作りやマニュアル化という点での課題はありますが、目の前のジャイロトロンシステムの研究開発に集中しながらも、チーム一同さらにスピードアップした将来を見据え、技術と効率の底上げに継続的に取り組んでいます。 

最後に、矢ケ崎さんの今後の目標について教えてください。 
私の目標は、フュージョンエネルギーの産業化に貢献することです。KFはこの業界で独自のポジションを築いており、私たちの努力次第で数十年後に社会に与える影響も変わってくるでしょう。現在のKF、ひいてはフュージョンエネルギー産業の方向性と未来は、私たちの取り組みに懸かっていると強く感じています。 

こうした、いい意味で「何が起こるかわからない」KFに魅力を感じています。そんな KF で、数少ない「KFでキャリアをスタートさせた人間」として力を発揮できる部分もあると思います。いかなる困難もワクワクしながら乗り越え、この先何十年とKFで研究開発に励みたいと思っています! 

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