2022.10.3
INTERVIEWS & COLUMNS

Behind the Fusion Scene: 平田 洋介

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平田 洋介, Head of Electro Magnetic Development​ 
2021年2月より当社参画。京都大学修士卒、東芝にてジャイロトロンおよび大電力ミリ波伝送技術開発、原子力機器開発に従事、カリフォルニア大学デービス校客員研究員、QSTにてIFMIF加速器開発。京都大学 博士。​ 

​​この業界に興味を持ったきっかけは?​ 
私と同世代で核融合に関わる方なら、これがきっかけだったという方も少なくないんじゃないかなと思うんですが、高校生の時に吉川 庄一氏の「核融合への挑戦」を読んだのがきっかけでした。​ 

​​「地球上に太陽を作るって凄そう・・。面白そうだし、どうせやるならこれかな」と思い、大学では、原子核工学のプラズマ核融合を研究​​し​​ました。​​吉田キャンパスで小型トカマク​​の実験を行なっていた先生について、卒論では、​​中性粒子によるプラズマイオンの温度計測​​について書きました。​ 

​​その後、ドクターに行こうか迷った時に、自分に夢があるのかを真面目に考えたんですが、​ 自分のやりたいことや欲しいものを思い浮かぶ限り書き起こしてみると、自分にはそれほど大きな欲望がなく、普通の生活を求めていることがわかったので、企業に就職することにしました。​ 

​​新卒で入社した企業では、研修後、ジャイロトロン開発の部署に配属され、その後10年近くジャイロトロンに関わる仕事をしていました。​ この時の最初のお客さんや自分の上司だった方が、KF​​執行役員​​の坂本さん*1をはじめ現在一緒に仕事をしている方々なので、私にとっては同窓会のような、当時に戻ったような気持ちになります。​ 

​​私がジャイロトロンに関わっていたのは、本当に走りの​10​年程だったのですが、その時に苦労していた課題が、​​ほぼ解決されて​​いて、坂本さん達が繋いでくださったものにこうして今関われ​​てい​​るのは感慨深いと思っています。​ ​​また、開発者として、自分が開発に携わったものが研究所や工場を出て、製品となる姿を最後まで見届けるというのは、大企業の研究員の方にとってもモデルケースのようなものかと思うのですが、会社が変わっても、自分が携わっていたものを​​製品として​​輸出する段階に関われるのは、すごい巡り合わせだなと感じています。​ 

特に印象に残っているご経験はありますか?​ 
社会人​​8年目​​に経験したヘリカル​​装置で​​の導波管を​​用いたミリ波​​伝送試験​​のプロジェクト​​です。​ ジャイロトロンの製造部門、電源の製造部門の方々と共に​​開発部門を代表する​​立場で現場に赴いていたのですが、​​このような大規模の機器の納入試験​​に関わるのは、この時が初めてでした​​。​ 

​​開発部門の人間としては​​、うまくいかない時には自らが​​率先して対応するべき​​立場だったわけですが、この試験では、マイクロ波が​​導波路の途中で放電してうまく伝送できず、​​納品先が期待している結果をなかなか出すことができなかったんです。​ ​​試行錯誤の手立てがあるうちはまだ良かったのですが、浮かぶ限りのアイディアも試し尽くして、それでも思う結果が出せない日々が続いた時期は本当に辛かったです。​ 

​​そして、​​月曜の早朝に​​現地に​​出社して金曜日の遅くに帰るような日が半年ほど続いたある日の朝、実験に関わっていた先生がポツンと「あそこで変なことが起きている気がする」と言ったんです。​ ​​試験で扱っていた導波管は、直線の導波管を直角に曲げたものをつなげて、目的地までマイクロ波を飛ばすような設計だったんですが、その接合部分でマイクロ波を反射させる時に、マイクロ波の形が​​思っているよりも​​乱れ​​ている​​のではないか?ということでした。​ 早速何が起きているのかを調べてみると、反射する時にマイクロ波の形が変わり、一部放電してしまっていたことが、マイクロ波が最後まで辿り着けなかった原因のようでした。​ そ​​こで​​、反射する時に放電してしまったマイクロ波を除去するために、部品のチューブに水を流して、はみ出したマイクロ波が放電しないようにし​​ました。すると、​​無事に通るようになったんです。​ 

​​その後、数回のテストを経て、​​導波管の結合部の​​全て​​を一から​​その設計に作り替える方向で会社とも調整を進め、最終的に、無事100mのマイクロ波を伝送することができました。数ヶ月間、現場の空気も重く、すごく苦しい期間が続いた末での解決だったので、終わった後は思わずその場に座り込みました。​ 

​​特に鮮明に覚えているのは、​​その日の夜のこと。ずっと一緒に取り組んでいた先生が飲みに連れて行ってくれたのですが、その時に「本当に今回は助かった、ありがとう」と言ってくれたんです​​。​ 感謝していただけたことに、すごく救われました。​​客先とメーカーの関係を超え、同じチーム員として認めてもらえたのかなとも感じました。​ 

​​この経験を経て、開発は​​納入して​​稼働させるまで動く保証はなく、​​仮に​​結果がでないときにも、淡々と取り組み続けるしかないとある程度割り切れるようになったと感じています。​ 同時に、開発現場の方々との関係性についても、お客さんと納入業者だったにも関わらず、最終的に建設的な話し合いができるような関係を築くことができたので、私にとっては原体験と呼べるような学びの多い経験でした。​ 

​​現在KFではどのようなプロジェクトに取り組んでいますか?​ 
ジャイロトロンおよび電源や測定装置などの周辺機器を含めた全体を見ています。一方で、今後会社として獲得していく必要があるライセンスであったり技術開発力を加速するための設計コードの整備を若手メンバーと協力しながら進めています。​ 

​​具体的な例を挙げると​​、ジャイロトロンでは出力窓から取り出した​​ミリ波​​ビームをMOU(Matching Optics Unit)と呼ばれる機器を用いて導波管に入力して核融合炉まで伝送します。MOUの内部には、高効率で導波管にミリ波を入れるための特殊なミラーが入っていますが、このような​​ミラーの設計コードを整備しています。また、ジャイロトロンの高効率化には質の良い電子ビームを生成し、ミリ波発振後には効率よく電子ビームを改修する必要がありますが、この電子ビームの軌道計算コードなども作成しています。​ 

​​昔と比べて計算機の能力が向上しているので、当時には想像がつかなかったような高精度な計算が可能で、楽しみながらやっています。​ そのほか、品質保証に関わる書類の作成や企画、輸出や情報セキュリティのルール作りなど、ジャイロトロン関連以外にもさまざまなプロジェクトに携わっています。​ 

これまでのKFでの仕事をへて、自分自身に変化があったと感じますか?​ 
1年弱スタートアップに在籍してみて感じたことですが、大手企業でみてきたものが予想以上に活かせることに少し驚いています。​ 

​​例えば、品質保証や輸出などの分野は、私にとっては、過去に他の​​専門の​​部署が行なっていた仕事だったり、専任がおらず暫定的に担当したことがあるというような仕事で、自分の専門分野ではないのですが、組織の立ち上げている段階だからこそ、必要となる組織機能として起案したり、0から0.1の雛形を作るところを担当することがあります。​ 

​​もちろん、品質保証や輸出は重要な機能なので、KFの中でも専門知識のある方に引き継がれていますが、0から組織を作る段階では、成熟した組織の例を知っていること自体が強みになることがわかり、これまでの働き方では見えてこなかった点だったので、こういう活かし方があるんだと目から鱗でした。​ 

​​今後5年間でKFはどのように変化すると思いますか?​ 
現在は、行動力のあるメンバー​​が力を合わせることで、​​想像以上の早いスピードで​​事業の​​形が出来上がってきて、会社としても機動力が高い​​フェーズにある​​と感じています。​ 

​​ただ、これから組織が大きくなるにつれて、自分で考えてリーダーシップを取るタイプの方ばかりではなく、指示に対して的確に行動することができるような人材も必要になってくると思います。特に製造が始まるとコツコツ取り組むことが必要になってくるので。そうなってくると、堅実なタイプの人が増えることでスピードが出しにくくなったと感じる人も出てくる。今すごく機動力に溢れているからこそ、組織が大きくなっていく中での課題もあると思います。​ 

​​そうした時に、既存の大手企業から学べるものを活かすというのは一つ重要だと思います。すでに成熟した企業にも​​、​​もちろんその企業なりの課題がありますが、例えば100年続いた企業であれば、100年分のトライアルアンドエラーの結果、洗練された仕組みが残っています。そこからどの程度今の自分達の企業に即したものを取り入れるかの判断は必要ですが、完全に0から作って既存の企業が味わっている失敗を繰り返すよりも有意義だと個人的には思います。​ 

​​特定の企業を見本にして完全に模倣しようとすると、その企業以上のところには辿り着けなくなってし​​まい​​ますが、メンバーが違えば出来上がるものも違うと思うので、これから21世紀のグローバルエンジニアリングカンパニーがどんな組織になっていくのかみていきたいです。​ 

​​平田さん自身はKFでどのようなことを達成したいですか?​ 
これからの5年を目処に、​​まずは​​私たちの世代の手が離れても現場が回るような形の準備をしていきたいと考えています。​ 

​​開発においては、仮に今すぐに誰かが現場を離れたとしても、残ったメンバーで現場はなんとかしていくと思うのですが、その時に当事者となる人たちのヒントとなるようなものが少しでも多い方がいいと思っています。​ 

​​また、我々の世代で培ったものを残して、その後、今まで作ったものの再生産のみになってしまわないように、クリエイティビティにあたる部分を若い方達にどうやって繋いでいくかについても考えていかなければいけないと感じています。​ 

*【関連プレスリリース】京都フュージョニアリング執行役員の坂本慶司、米国電気電子学会(IEEE)からJohn R.Pierce Awardを受賞 

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