皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリング広報担当です。
フュージョンエネルギーでは、原子核同士がぶつかり融合することで膨大なエネルギーを生み出すのですが、その融合のために原子をプラズマ状態にしなければなりません。
一体どうやってプラズマ状態にするのか・・・
それは、燃料となる水素などの原子を1億℃という超高温に加熱することで実現しているのです。
そこで使用される装置の一つがプラズマを加熱するジャイロトロンシステム（以下、ジャイロトロン）。磁場閉じ込め方式の核融合炉において重要な役割を果たします。
ジャイロトロンは長年にわたり国の研究機関や多くの開発者が関わり、研究開発が行われていました。当社はその技術をベースにしながら、高周波数の開発や出力時間の長期化など、日本発のジャイロトロンが世界中で利用されるように研究開発を行い、産業転用できるよう取り組んでいます。加えて製品管理や品質保証など、ジャイロトロンの社会実装に向けて必要なプロセスを民間企業の立場から推進しています。
今回、ちょうどジャイロトロンの試験が行われていると聞いたので、その様子を少しだけレポートします。
– ジャイロトロンの受注から納品までのプロセス
ジャイロトロンは3mほどの大きさながら、非常に精密な機器のため、受注をしてから納品までのプロセスで複数回の試験を行っています。
ざっくりとしたプロセスが以下になります。
「発注」→「設計」→「部品製造」→「組立」→「調整工程・性能試験」→「輸送」→「SAT（Site acceptance test）：試験」→「納品」
まず顧客が求める仕様のジャイロトロンを「設計」し、必要な部品を製造、そしてそれを組み立てます。1つのジャイロトロンには細かな部品も数えると50社ほどが関わっており、日本の技術が結集されているのです。
ジャイロトロンとは、プラズマ加熱に必要な高出力のマイクロ波を発生させる装置ですが、システムとして機能する為には、電源や超電導マグネットなどと組み合わせて、ミリ波の出力や周波数、伝搬モードなどを調整する必要があります。この統合試験は国内施設で行い、性能を確認します。その後、お客様施設へ輸出されますが、設置後にも受け入れ試験があります。すべての試験をクリアしてようやく納品となります。
長い道のりですが、核融合炉において非常に重要な役割を担う装置のため、万全の状態で納品する必要があるのです。
当社ジャイロトロンチームのメンバーも、このような長いプロセスに日々向き合っています。
– 試験の様子を少しだけレポート
今回レポートするのは、当社と共同研究を行う核融合科学研究所（NIFS：National Institute for Fusion Science）の施設にあるジャイロトロンです。
まず試験するためのジャイロトロンを設置するところから。
かなり大きいため、クレーンで吊り下げた状態で台に設置していきます。
↑設置された状態がこちらの写真。
ジャイロトロンには様々な部品が取り付けられています。
撮影日に行っていたのは、ダミーロードという部品を取り付ける作業です。
ダミーロードは、マイクロ波を内部で吸収する装置です。吸収した熱量からジャイロトロンからのマイクロ波出力を算出する為に用いられます。
その後、発振されたマイクロ波の純度を確認するバーンパターン測定や、発振周波数の測定などを行いながら、ジャイロトロンのチューニングを行っていきます。
後日、準光学的結合器（MOU）という部品の取り付けが完了したジャイロトロンがこちらの写真です。
このMOUという部品は、ジャイロトロンから発生したマイクロ波を、複数の鏡を用いて導波管という核融合炉につながる部分へと導入するためのもので、ジャイロトロンから核融合炉にマイクロ波を効率よく届ける重要な役割を担います。
今後このジャイロトロンシステムはMOU込みでの長パルス試験、その他機器との組み合わせ試験といった工程を経て、海を渡り顧客のもとに運ばれることになります。
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今回、普段はなかなか見ることのできない試験現場を見ることができ、改めてフュージョンエネルギー実現に必要な機器には、緻密で繊細な技術が必要なことを実感しました。
日本の研究者たちが長年培ってきた高い技術力を継承しながら、フュージョンエネルギーの産業化を後押ししていけるよう、取り組んでいきたいと思います。
今後とも京都フュージョニアリングにご注目ください。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう！
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