2025.06.3
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THE FUSION ERA – UKAEAでの出向を終えたエンジニアにインタビュー

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皆様、こんにちは。
京都フュージョニアリングの広報担当です。

2024年11月以降、英国原子力公社(UKAEA)との人材交流により、計5名のエンジニアが当社に出向し、当社からも1名がUKAEAへ出向していました。

UKAEAから出向したメンバーの様子は、これまでのブログやSNSを通じて紹介しましたので、今回はUKAEAに出向した当社エンジニアのMario Oliverにスポットライトを当て、UKAEAでの仕事内容や、出向を通じて得た経験や気づきなどを聞いてきました。ぜひご覧ください!

UKAEAに出向することになったきっかけは?

当社は現在、UKAEAのSTEP(Spherical Tokamak for Energy Production)プログラムの概念設計を支援するEDP(Engineering Delivery Partner)コンソーシアムを通じて連携しています。(※EDPについて詳しくはこちらのニュースリリースをご覧ください。)

このプロジェクトの一環として、UKAEAにエンジニアリングサービスを提供するため、現地対応のエンジニアとして私が選ばれました。

私はCAD(Computer Aided Design)、シミュレーション、エンジニアリングに関するリサーチなどの経験があり、熱流体解析、フュージョンエネルギーに関わる材料の研究開発、プロジェクトマネジメントなどにも一定の知見があります。また、タングステンなどの材料に関する別のEDPプロジェクトに関わっていたこともあり、私の名前が挙がったのだと推測します。

出向者として選ばれた後のプロセスについて教えてください。

UKAEAへの出向が決まった直後、STEP のManufacturingチームのエンジニアたちと顔合わせがありました。

「まずはお互いを知るための場」だと思い、程よい緊張感で臨んだところ、いきなりフュージョンエネルギープラントの写真を見せられ「この部品はどうやって製造しますか?」と具体的な考えを求められました。

突然の質問に少し動揺しましたが、私がこれまでに蓄積した知識をもとにした回答は満足のいくものだったようで、期待に応えることができ、ホッとしたことを覚えています。

当初、出向は「週2日勤務」の予定でしたが、先方とやり取りを重ねるうちに「週3日勤務はどうか?」との依頼がありました。ただ、週に3日の勤務だと、週後半のミーティングには参加できないので、もどかしさを感じるようになっていました。

最終的には「フルタイムでの参加」を求められることになり、役立っている実感を得るとともに、実力が認められたようで嬉しかったです。STEPのメンバーとの連携がさらにスムーズになり、チームの一体感も増していきましたね。

出向中はどのような仕事を担当していましたか?

私は「Outboard Manufacturing」の一員として、STEPの設計チームと製造チームの橋渡しを担当していました。

具体的には、設計チームが考案したアイデアが実際に製造可能かどうかを確認・検証したり、技術的に難易度の高い要素に対して、サプライチェーンを問題なく構築できるかを見極めたりしていました。

最初のうちは、「外部の専門家」として期待に応えなければというプレッシャーに加え、チームの「新参者」としての不安が交錯し、苦労することもありました。使い慣れないツールや聞きなれない略語もあって大変でしたが、できるだけ早くキャッチアップできるように努め、その結果、次第に自信を持って仕事ができるようになりました。

加えて、STEPチームのメンバーは非常に協力的で、何事もスピード感を持ちながら、積極的にコミュニケーションを取って仕事をしていたのが印象的でした。UKAEAは公的機関ですが、民間企業のような雰囲気を感じましたね。メンバーの中でも、特に印象に残っているのはUKAEAに新卒で入社したDavidson Sabu氏です。彼は終始私をサポートしてくれて、出向期間中とても心強い存在でした。

その後、次第に担当する仕事の幅が広がり、製造に関するレポートの作成、業務仕様書のドラフト、入札の発信、サプライヤーとの契約まで多岐にわたりました。公的機関であるUKAEAでこれらの業務を経験できたことは、これまで民間のサプライヤー側の立場で働くことの多かった自分にとっては非常に新鮮でした。

UKAEAでの経験は、これまでのキャリアの中でも屈指の充実したものでした。UKAEA側も満足してくれたようで、まさに双方にとって意味のあるコラボレーションだったと思います。

今回の出向を通じて学んだことを教えてください。

この出向で得た学びは大きく3つあります。

1つ目は「一つひとつの仕事に集中することの大切さ」です。多くの場合、マルチタスクをこなす必要がありますが、優先順位をつけて一つずつ丁寧に取り組む方が、結果的に生産性が高いと実感しました。

週の3日をUKAEAで働き、残りの2日を京都フュージョニアリングで過ごしていた頃は、あちこちに意識を向ける必要があり、想像以上に負荷がかかっていました。しかしUKAEAでフルタイムの勤務をするようになってからは、UKAEAでの業務に集中して取り組むことで生産性が向上し、プロジェクトを円滑に進めることができるようになりました。

2つ目は、「出向中は自分の働きが三方向に影響を与える」という意識を持つことです。成果を出せばUKAEAから当社に対する印象も良くなりますし、逆にミスがあればその信頼も損なわれかねません。つまり、自分の行動が“自分自身“だけでなく、”派遣元であるKF“、そして受入先の”UKAEA”の三方向に影響を及ぼすため、そのことを常に意識するようになりましたね。

その意識があったからこそ、技術的な側面だけでなく、時間厳守やコミュニケーション、進捗管理といった「プロとしての基本的な立ち振る舞い」に対しても、より一層注意を払う意識が養われました。

3つ目は、民間企業と公的機関の文化的な違いを実感したことです。KFはスタートアップということもあり、何事にもスピード感があります。一方UKAEAはルールやプロセスが細かく指定されていますが、堅実に進行していきます。そのどちらの側面もフュージョンエネルギーの実現に貢献するものだと思いますので、異なる価値観に触れ、それぞれの特徴を理解する機会を得られたのは、非常に貴重な経験だったと思います。

民間企業と公的機関の連携は今後さらに重要になると思いますか?

そう思います。STEPの戦略に“outcome led, and research focused.(成果主導、研究重視)”と書かれているように、フュージョンエネルギー技術の開発には、スピード感をもってチャレンジを重ね、技術力を磨いていくことが重要と感じています。そのためにはパートナーである民間企業のスピード感や柔軟性を取り入れることもプラスに働くのではないかと思っています。

もちろん、知的財産の扱いなど、両者で細かく取り決めなければならないことも多々ありますが、それでも連携することで相互理解が深まり、より技術開発が進み、良い成果に繋がると信じています。


今回の出向はMarioにとって、普段とは異なる環境でエンジニアとしての経験を積むと同時に、多様な組織の在り方や連携の可能性を体感できる貴重な機会となりました。

フュージョンエネルギーの実現にはグローバルかつ、多岐に渡る技術を跨いだ連携が欠かせません。

当社は現在、UKAEAをはじめ、さまざまなパートナーと連携していますので、今後もブログなどを通じてその様子を発信していきたいと思います。

今後とも京都フュージョニアリングにご注目ください。
また次回の「THE FUSION ERA」でお会いしましょう!

Marioのインタビュー記事「Behind the Fusion Scene」はこちら
THE FUSION ERA:https://kyotofusioneering.com/news_category/blog


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